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【ステージ 芸】離見の見 後進育てる容赦なき役者魂 代役好演の孫にそっぽ 編集委員・亀岡典子

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【ステージ 芸】
離見の見 後進育てる容赦なき役者魂 代役好演の孫にそっぽ 編集委員・亀岡典子

松谷武判・画 松谷武判・画

 「大衆的な人気では、せがれ(野村萬斎)に負けるかもしれないが、狂言ではまだまだ負けないですよ」

 和泉流狂言師で人間国宝、野村万作の目がギラリと燃えた。3年ほど前、インタビュー取材した折、長男の活躍に目を細めながらも、一言、クギを刺した。

 孫の活躍に顔を背けた二代目鴈治郎、「まだまだ負けない」と言い切った万作。2人の姿には、「大人げない」では済まない、芸の世界に生きる人間のすごみが感じられた。

 二代目鴈治郎は、亡くなる半年前まで舞台に立ち、二枚目を色気たっぷりに演じた。万作も3年前、「楢山節考(ならやまぶしこう)」を約60年ぶりに見つめ直し、再演している。

 年のうんと若い肉親にまで競争心を燃やすぐらいの人間だからこそ、芸に対する執着、向上心はますます盛んなのではないだろうか。常に最高の芸を追求し死ぬまで舞台に立ち続ける。現役であり続ける強烈なモチベーションを見た思いがした。

 しかし、その先にもうひとつ、深い理由があるように思うのだ。

 作秋、上方落語家、笑福亭鉄瓶(てっぺい)は、独演会で「野ざらし」を演じた。場内は大ウケ。高座を降りてきた弟子を、師匠の笑福亭鶴瓶は笑顔で迎えた。だが直後に高座に上がった鶴瓶は倍以上の笑いを取ったという。

 弟子は師匠の背中を見て育つ。師匠の存在が大きければ大きいほど、弟子は師に憧れ、師を目指し、必死で食らいついていく。長い目で見ると、師の「大人げない」振る舞いこそが、弟子を大きく育てるのではないだろうか。弟子であろうが、子供であろうが、容赦はしない。それが本当の愛情表現なのかもしれない。

                   

 ■離見の見=客観的視点の大切さを説いた世阿弥の言葉

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