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【鑑賞眼】粋な着流し 歌舞伎の匂い…国立劇場「今様三番三」「隅田春妓女容性」

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【鑑賞眼】
粋な着流し 歌舞伎の匂い…国立劇場「今様三番三」「隅田春妓女容性」

 「今様三番三(いまようさんばそう)」から。「三番叟物」の中でも珍しい作品で、大薩摩の勇壮な語りと三味線に導かれ、曽我二の宮実ハ如月姫の中村雀右衛門(じゃくえもん)がセリ上がる。きりりとした三番叟から艶やかにくだけ、やがて本性あらわに白布を勢いよく振る「布晒し」の躍動感へと変化する踊りが美しい。

 続く通し狂言「隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)」も39年ぶりの上演。通称「梅の由兵衛(よしべえ)」といって、かつて武家奉公をしていた由兵衛が今、江戸の侠客(きょうかく)である身ながら、家の重宝を盗まれ危機に陥っている旧主への恩と義理のために尽くす話。江戸という時代性が生み出した義太夫狂言の定番ストーリーだが、本作は筋立てに説得力が弱い。主人大切が前面に出過ぎていて、犠牲者への悲しみの裏付けがない。

 しかし、そのぶん浮き上がって来るのが騒動に絡む趣向の面白さだ。中村吉右衛門が祖父の初代吉右衛門、実父の松本白鸚(はくおう)が演じた由兵衛に初役で挑んだ。昔、初代沢村宗十郎が由兵衛役でまとい、ヒットしたという宗十郎頭巾姿で登場する花道の粋な着流し風情に漂う歌舞伎の匂い。「あの後ろ姿が色っぽいのよねぇ」と背後の婦人客がため息を漏らした。

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