産経ニュース

【ステージ 芸】離見の見 「無心」の境地で臨む 野村万作「三番叟」 

エンタメ エンタメ

記事詳細

更新

【ステージ 芸】
離見の見 「無心」の境地で臨む 野村万作「三番叟」 

 今年1月、大阪・大槻能楽堂の「新春能」で、狂言の人間国宝、野村万作の「三番叟(さんばそう)」を見た。

 「三番叟」は、能「翁(おきな)」のなかで、狂言方が勤める役どころ。五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈って舞う躍動的な「揉(もみ)の段」と、鈴を振りながら舞う「鈴の段」からなり、格調高く、体力と運動量を要する大役で知られている。

 実はその少し前、「今『三番叟』を見るのなら、ぜひ父の舞台を見てください」と万作の長男、野村萬斎に熱心に言われていた。「三番叟」をライフワークとしている萬斎が、なぜ、父、万作の「三番叟」を勧めるのか。不可解だった。

 「三番叟」は、「揉の段」と「鈴の段」を、たったひとりでおよそ30分、舞い続けなければならない。裂帛(れっぱく)の気合のこもった掛け声を発しながら3回連続で跳躍するダイナミックな「烏(からす)飛び」もある。万作は齢(よわい)80半ば。もはや厳しいのではないかと思った。

 だが、その舞台に、息をのんだ。

 確かに、跳躍の高さは、萬斎の半分にも及ばない。しかし一つ一つの所作からにじみ出るのは、人間と自然が共生するおおらかな喜び。土を耕し、豊作を祈って生きてきた日本人の記憶のようなものすら浮かび上がっていた。場内が祝祭の気分に満ちあふれたのだ。

続きを読む

このニュースの写真

  • 離見の見 「無心」の境地で臨む 野村万作「三番叟」 

「エンタメ」のランキング