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【シネマプレビュー】立ち去った女

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【シネマプレビュー】
立ち去った女

フィリピン映画「立ち去った女」の一場面 フィリピン映画「立ち去った女」の一場面

 フィリピンの鬼才、ラヴ・ディアス監督の個性がほとばしる作品で、昨年のベネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞に輝いた。時代は20年前、香港の中国返還を控え、フィリピン経済の弱体化と治安の悪化が懸念されていた。無実の罪で30年間、刑に服したホラシアは、罪をかぶせた元恋人、ロドリゴへの復讐(ふくしゅう)を誓う。釈放されてロドリゴの行方を追うが、彼は警備の厳重な豪邸に住んでいた。

 主人公が身を潜めて探りを入れるという展開はサスペンスの王道を行くものだが、その見せ方は極めて独創的。あらゆるショットがワンカット長回しの全編モノクロ映像で、しかも登場人物が歌う以外は、エンドクレジットを含めて一切の音楽がない。それでいて娯楽の要素もたっぷりなら、貧困問題や性的少数者といった社会性も備える。4時間近い長さだが、暗い夜道でかすかに人影が動いているような画面を延々と見続けているうちに、えもいわれぬ陶酔感に包まれるから不思議だ。

 14日、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開。3時間48分。(藤)

 ★★★★(★5傑作 ★4見応え十分 ★3楽しめる ★2惜しい ★1がっかり)

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