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【鑑賞眼】文学座9月アトリエの会「冒した者」 人類への怒り・哀しみ・警鐘

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【鑑賞眼】
文学座9月アトリエの会「冒した者」 人類への怒り・哀しみ・警鐘

原爆投下から7年後の日本を舞台に、日本人の抱える問題を問う(宮川舞子撮影) 原爆投下から7年後の日本を舞台に、日本人の抱える問題を問う(宮川舞子撮影)

 文学座創立80周年記念の9月公演。かつてプロレタリア劇作家として名をはせた三好十郎の「冒した者」を初めて取り上げた。5月の山本周五郎作「青べか物語」と同じく、時代を呼吸し進化する劇団姿勢の躍動感はあふれるばかりだ。

 昭和27年の日本。東京郊外に建つ空襲被害そのままの3階建ての家で、共同生活する9人の住人の平穏な日常生活に、劇作家の私(大滝寛)を慕う青年、須永(奥田一平)が訪ねてきたことで、住人たちの精神バランスが崩壊してゆく。夕刊紙記事で、須永が恋人の家族ら3人を殺して手配中の殺人犯であることが判明。おびえる住人たちを代弁して退去を求める私に、須永は住人の一人で広島で被爆し盲目となった少女、モモコ(金松彩夏)が好きで会いたかったからと漠然とした言い訳ばかり…。

 そこからが急転直下、10人それぞれが絡み合い、敗戦から7年しかたっていないのに、再軍備が語られる世相のイデア(姿)を、思想と下世話を重複させて白熱化させる。「原爆を落とした罪」を糾弾する議論の裏側に「落とされた罪」が透け、3人殺しと戦中での殺人との比定(ひてい)にも及ぶ。米中韓露、北朝鮮。現在ただ今の日本の世相が暗喩(あんゆ)される。

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