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【ステージ 芸】離見の見 「舞台の神様」 奇跡を引き寄せる名優の執念

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【ステージ 芸】
離見の見 「舞台の神様」 奇跡を引き寄せる名優の執念

 舞台には神様がいるそうだ。

 演劇などの舞台ではときに、人知の及ばぬ奇跡が起こる。日々劇場に通っていると、“舞台の神様”の存在を信じずにはおれない出来事にしばしば遭遇する。

 思い出されるのは、大阪を本拠にした女優、ミヤコ蝶々さん(1920~2000年)の晩年の舞台だ。

 蝶々さんは150センチに満たない小柄な体、庶民的な関西弁で、舞台やテレビを中心に活躍。特に、大阪・道頓堀の中座で毎年行っていた座長公演は、人情芝居と「ひとりトーク」の2本立てで、中高年の女性に絶大な人気を誇った。しかし晩年は、老いと病が体力を奪い、小さな体がさらに小さくなった。それでも蝶々さんは舞台に立ち続けた。

 その日私は、中座の楽屋あたりにいた。開演前、蝶々さんが現れた。おぼつかない足取り。楽屋への20段ほどの階段も自力で上れず、若い俳優の背におぶわれて上っていった。慌てて目をそらしたが、そんな体で今日の舞台を勤めるのは到底無理だろうと思った。

 ところが、である。

 幕が開くと、蝶々さんは花道から笑顔で勢いよくスキップしながら登場したのだ。そこには弱った老女優の姿はどこにもなかった。

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