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【鑑賞眼】人間を民族で括るのではなく…地人会新社「これはあなたのもの 1943-ウクライナ」

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【鑑賞眼】
人間を民族で括るのではなく…地人会新社「これはあなたのもの 1943-ウクライナ」

つらい過去に向き合うフリーダ(八千草薫、右)を気遣うエミール(吉田栄作) つらい過去に向き合うフリーダ(八千草薫、右)を気遣うエミール(吉田栄作)

 ノーベル化学賞受賞のロアルド・ホフマン作。ユダヤ系ポーランド人として生まれた彼が、第二次世界大戦中、ひそかに匿われていた体験に基づく。鵜山仁演出。川島慶子訳。

 エミール(吉田栄作)は、母のフリーダ(八千草薫)、妻のタマール(保坂知寿)らと米国で平穏に暮らす。だが高校生の娘が歴史の課題のためにホロコーストについて問うたことから、フリーダは封印していた過去を語り出す。

 フリーダは1943年、現ウクライナでナチの迫害を逃れ、当時5歳のエミールとともにウクライナ人家庭の屋根裏部屋に匿われていた。なのに、父と夫と妹をナチに殺されたフリーダは今も、ナチに加担したウクライナ人すべてを「人殺し」と罵(ののし)る。だがそこへ、匿ってくれたウクライナ人の娘アーラ(かとうかず子)が訪れ、フリーダとエミールは過去を見つめ直すことになる。

 現在と往時を行き来する舞台は、戦争が人間の心をえぐる傷痕の深さを伝える。しかし、アーラの訪問やタマールの意見が視野を広げる。フリーダは久しく、金銭契約により匿ってもらったと考えていたが、実は無私の行いだった。人間を民族ごとに括(くく)るのではなく個人として捉え、その善意を尊重する考え方は、排外主義が台頭する現在、示唆に富む。

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