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【話の肖像画】落語協会会長・柳亭市馬(5)「笑わそうとするな」の真意は?

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【話の肖像画】
落語協会会長・柳亭市馬(5)「笑わそうとするな」の真意は?

落語協会のファン感謝イベント「謝楽祭」であいさつ =平成27年9月 落語協会のファン感謝イベント「謝楽祭」であいさつ =平成27年9月

 一門の兄弟子で、一番稽古をしてもらったのは(入船亭)扇橋(せんきょう)師匠ですね。家も近くて、よく電話がかかってくるんです。「誰それが来るから一緒に稽古に来なさい」って誘ってくださった。(柳家)小三治師匠と扇橋師匠とは、気の長短というか、はたから見るとほほえましい仲でした。

 その小三治師匠は、複雑で、分かりにくい人です(苦笑)。根は優しいんですが、はた目は怖い。あまりしゃべらないし、笑わないしね。もちろん噺(はなし)や芸については、いつも考えていると思いますよ。おそらく、小三治師匠の中で、「これでいい」というような思いなんてないでしょう。

 〈小三治は現在、落語家唯一の人間国宝、最高峰の芸を誇るひとりだ。市馬は小三治から「お前の噺は押しつけがましい」と怒られたことがある。「面白いことを言って笑わそうと思っているうちはダメだ、つまらない」というのだ〉

 ね、分からないでしょう。もともとは、(古今亭)志ん朝師匠が、父親の志ん生師匠から聞いた話らしいんですけど、こっちもまだ若いころだったから、「ウケようと思ってやっているのが、なぜいけねぇんですか」って反論したんです。師匠は、「そんなにウケたけりゃあ、(笑いの多い)新作(落語)か漫談やれ」って。結局、分かり合えませんでした。

 この年になってやっとかな、小三治師匠が言ってたことが、おぼろげながら分かってきたんですよ。ここでこう言えばウケるのは分かっているんだけど、その通りにすれば、あざとさや作為も見えてしまう。でもね、「笑わせたきゃ笑わそうとするな」なんて禅問答ですよ。真意はまだはっきりと分かりません。生涯分からないかもしれませんねぇ。

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