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【鑑賞眼】熟練の指揮ヤノフスキ 東京・春・音楽祭 ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」(演奏会形式)

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【鑑賞眼】
熟練の指揮ヤノフスキ 東京・春・音楽祭 ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」(演奏会形式)

オーケストラ後方に映像が映された「神々の黄昏」の公演 (飯田耕治撮影) オーケストラ後方に映像が映された「神々の黄昏」の公演 (飯田耕治撮影)

 いま日本はワーグナーの「リング」4部作の上演ラッシュである。その先頭を切っていた「東京・春・音楽祭」で、セミ・ステージ形式の「神々の黄昏(たそがれ)」(NHK交響楽団演奏)が幕を下ろした。

 ドイツのバイロイト音楽祭では「神々の黄昏」の最初の幕の開演を告げるファンファーレは「呪いの動機」だが、本公演ではその呪いが不幸にしてジークフリートとブリュンヒルデにかかってしまった。

 初日(4月1日)の公演では両役が急遽(きゅうきょ)、代役の歌手になり、2日目(4日)でブリュンヒルデ役のリボールだけは復調して出演を果たした。少々、声は荒れていたものの実力のほどを証明した。

 声、表現、演技、いずれも抜群だったのはバルトラウテ役のクールマン。グンター役のアイヒェとアルベリヒ役のコニエチュニーがそれに次ぐ。ハーゲン役のアンガーも巨大な声量で会場を圧倒した。ソリスト級の実力者を擁した東京オペラシンガーズの男声合唱の迫力は特筆すべきもの。

 ヤノフスキの指揮は信念の安定感。余計な表情づけは無用とばかり脇目も振らず、ひたすら前を目指して進むといった趣だが、それでいて機械的にならないところが熟練の棒だろう。

 同楽団にゲストコンマスとして入ったキュッヒルの貢献は視覚的にも聴覚的にも明らかで、4部作を通じて最大の功労者。

 一方で映像、字幕、歌手やソロ奏者の立ち位置と出入りのタイミングなど、依然として改善を望む余地は多い。次回はぜひ再考を。4月4日、東京・上野の東京文化会館。(音楽評論家 吉田真)

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