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【谷賢一の演劇地獄道】(12)子離れって本当に難しい

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【谷賢一の演劇地獄道】
(12)子離れって本当に難しい

「白蟻の巣」に出演中の平田満さん(左)と私 「白蟻の巣」に出演中の平田満さん(左)と私

 演出家として携わる場合、長い稽古を共にしたのち初日、という緊張と興奮の出産を味わう。そこには母親的な一体感があるものだが、それでもやはり初日が開ければ子離れのタイミングだ。本番が始まれば舞台は俳優のものであり、演出家は何もできない。授業参観に訪れてヤキモキする親の気持ちはこんなだろうか。「自由に、楽しく、伸び伸びとやってくれれば」と祈りつつ、「失敗しませんように」と客席で一人手に汗握る。そして終演後、やめときゃいいのにダメ出しと称して「満くん、あのね…」と声をかけに行く。

 幸い今、新国立劇場(東京都渋谷区)で上演中の『白蟻(しろあり)の巣』の“子供たち”はいい子ばかりで、母親がしゃしゃり出ても「うるせえ、引っ込んでろ」などと言ったりせず、ハイハイと聞いてくれる。それどころか自ら新たな課題を設定して、毎日の本番をどう新鮮に生きるか貪欲である。親はなくとも子は育つ。ただ信じて見守ればいい。…分かっちゃいるけれど本番を見に行って、あーだこーだと言ってしまうのは、これも悲しい親のさがなのか。子離れって本当に難しいですね。公演は19日まで。(電)03・5352・9999。=毎月第3土曜日掲載

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