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【谷賢一の演劇地獄道】(12)子離れって本当に難しい

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【谷賢一の演劇地獄道】
(12)子離れって本当に難しい

「白蟻の巣」に出演中の平田満さん(左)と私 「白蟻の巣」に出演中の平田満さん(左)と私

 「親はなくとも子は育つ」とは日本の古いことわざだが、演劇を作っていて同じ気持ちをいつも味わう。作家と演出家、それぞれ感覚は違うが、いずれにせよ強く実感する。

 私事だがこの間、父親になった。子と母の結びつきの何と強いことか! それも当然だ。十月十日の妊娠中を一心同体で生きて、最後にはお互い命がけで出産に臨む。父親なんて「頑張れ、頑張れ」と手を握るのが関の山。生まれてみても当分は父親なんてただの他人だ。俺が抱けば泣きわめき、母に渡せばすぐさま笑顔。母には勝てねぇなと肩を落とす日々である。

 作家として演劇に携わる場合、立場はいわば父親だ。稽古が始まれば作品は演出家のものとなり、十月十日、母親=演出家との一体感を強めつつ勝手にすくすく育っていく。作家はむしろ疎まれる存在であり、たまに稽古場に顔を出すと警戒され、居場所がない。それでも「これは俺の子供なんだ」と奮起して稽古に行き、言わんでもいいことを言って煙たがれる。愛されることはほとんどない。俺が書いたはずの本なのに…。

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