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【回顧2016】テレビ 「電波メディア」のきしみ鮮明

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【回顧2016】
テレビ 「電波メディア」のきしみ鮮明

4K・8KのBS試験放送開始に伴い、式典に出席した関係者=1日、東京都千代田区 4K・8KのBS試験放送開始に伴い、式典に出席した関係者=1日、東京都千代田区

 熊本地震をはじめとする自然災害やリオ五輪・パラリンピック、国内外の選挙に芸能スキャンダル…。社会的関心を集めるニュースが多方面で相次いだ今年はテレビの影響力の大きさが改めて浮き彫りになった。一方で、放送法や受信料制度をめぐる議論も活発化。メディア環境の変化を受け、「電波メディア」をめぐる法律や制度のきしみが鮮明になった一年でもあった。(三品貴志)

                   

◆高市氏発言で紛糾

 年初に議論を呼んだのは高市早苗総務相の2月の国会答弁。政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に対し、放送法に基づき、「電波停止」を命じる可能性について言及した。民主党政権時代を含め、以前から総務省が示してきた法解釈だったが、一部の野党やメディアが反発。ジャーナリストの田原総一朗氏や鳥越俊太郎氏らが「怒っている」とする声明を出す一方、声明への批判も起こるなど波紋が広がった。

 3月には、TBS系「NEWS23」の岸井成格(しげただ)氏、テレビ朝日系「報道ステーション」の古舘(ふるたち)伊知郎氏、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子氏といった報道番組の「顔」が相次いで降板。国連人権理事会の特別報告者は4月、こうした状況を受け、日本の報道の自由が「政府の圧力や抑圧によりのっぴきならない危機にひんしている」とする中間報告を出した。

 ただ、岸井氏や古舘氏は「圧力」による降板を否定。作曲家のすぎやまこういち氏が代表呼びかけ人を務める「放送法遵守(じゅんしゅ)を求める視聴者の会」は11月、国連特別報告について、「客観性を全く担保できていない」「国連特別報告には、慰安婦問題におけるクマラスワミ報告のように、客観的根拠に基づかず、政治利用された例がある」などと懸念を示した。

◆NHK改革不可避

 一方、NHKをめぐっては受信料制度のあり方に焦点が当たった。

 さいたま地裁は8月、テレビを視聴できるワンセグ機能付き携帯電話を所持しただけでは受信契約を結ぶ義務はないとする判決を示し、NHKは控訴した。地裁判決は、テレビの「設置」を前提とした放送法と受信料制度が、携帯電話など機器の進歩に対応しきれていない可能性を示したものといえる。

 NHKは平成27~29年度の経営計画で「公共メディア」への進化を見据え、番組のインターネット同時配信実験に取り組むなどネット対応を推進。NHK改革については、放送の諸課題をめぐる総務省の有識者検討会もあり方を議論しており、放送と通信(ネット)の融合に向けて、受信料制度改革は避けて通れなくなっている。

 NHKの最高意思決定機関である経営委員会は12月、来年1月に任期満了を迎える籾井(もみい)勝人会長(73)が今期限りで退任し、後任にNHK経営委員で元三菱商事副社長の上田良一氏(67)が就任することを決めた。籾井氏は来年度予算編成に当たり、来年秋から受信料を月額50円程度値下げする案を経営委に示していたが、上田氏を含む経営委員から慎重意見が相次ぎ、見送られた。

 受信料制度に支えられた豊富な資金力を背景に、ネット業務を拡充するNHKに、民放からは「NHKがさらに巨大化することを危惧せざるをえない」(井上弘民放連会長)との声が上がる。放送メディアが岐路を迎える中、NHKが先進的で効率的な組織運営をどう実現し、どう「公共メディア」への進化の道筋を付けるのか。上田氏の実行力と説明力が問われそうだ。

                   

BSで4K・8K試験放送

 今年は8月にNHKが、12月に民放キー局などでつくる「放送サービス高度化推進協会(A-PAB)」が超高精細な4K・8Kの試験放送をBSで始めた。総務省は平成30年の実用放送開始を目指しており、関係団体の準備が大きく進んだ。

 ただ、試験放送を視聴できる4K・8Kテレビはまだ市販されていない。A-PABの福田俊男理事長は1日の式典で、「30年までに放送事業者で十分に態勢を整え、メーカーには適正かつ十分な画質を誇る受信機を開発していただきたい」と述べた。

 4K・8K実用放送をめぐっては、NHKのほか、在京民放キー局系のBS局やWOWOWなどが総務省に事業開始の申請をしており、来年初めにも認定される見通し。

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