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【鑑賞眼】死者との対話「願はくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」 世田谷パブリックシアター 「遠野物語・奇ッ怪 其ノ参」

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【鑑賞眼】
死者との対話「願はくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ」 世田谷パブリックシアター 「遠野物語・奇ッ怪 其ノ参」

遠野弁で不可思議な話を語る(左から)瀬戸康史、銀粉蝶、仲村トオル(細野晋司撮影) 遠野弁で不可思議な話を語る(左から)瀬戸康史、銀粉蝶、仲村トオル(細野晋司撮影)

 超常的な世界観の舞台を描く前川知大が、民俗学者・柳田国男の『遠野物語』の説話を基に書いた(演出も)。「願はくはこれを語りて平地人を戦慄(せんりつ)せしめよ」という柳田の言葉を借りて、地方の固有文化の衰退、異界を排除する現代日本を厳しく問いただす。

 架空の日本。社会の標準化政策で、逸脱するものは違法とされる。東北弁で書いた散文集を自費出版した作家、ヤナギタ(仲村トオル)は警察署に呼ばれる。方言を記述し、内容も迷信と判断されるとの容疑で、聴取に怪奇現象に詳しい学者、イノウエ(山内圭哉)が加わった。

 ヤナギタは遠野の青年、ササキ(瀬戸康史)から聞いた話で、事実と主張。議論の最中にササキが警察署に現れる。「遠野物語」の話を紹介しながら、舞台は現世と異界の境目へと迷い込む。語り部として登場するのがササキの祖母、ノヨ(銀粉蝶(ぎんぷんちょう))。山人や河童(かっぱ)など奇ッ怪な伝承を遠野弁で話すのが達者で心地よい。

 能舞台を変形した簡素な舞台。感覚を澄ませば、近くの山で見守る先祖の霊や異形の者の存在を意識できる。われわれの生はわれわれが葬り去ってきたもの、死者との対話の上に成り立っていることを示す。

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