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【鑑賞眼】てがみ座「燦々」 「表現者の業」追求にすがすがしさ

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【鑑賞眼】
てがみ座「燦々」 「表現者の業」追求にすがすがしさ

 葛飾北斎の娘、お栄(後の応為(おうい))の若き日をつづった伝記劇だ。作者の長田(おさだ)育恵は、応為を名乗るまでの過程をひとつの成長物語として描き出した。扇田拓也演出。

 お栄(三浦透子)は嫁いだものの家事には向かず、絵への情熱をたぎらせるが、北斎(加納幸和)は実力を認めない。折しも、シーボルトから北斎に「江戸の暮らし」100枚を西洋の画法で描くよう依頼があり、お栄にも機会が回ってくる。

 絵師として突破を果たす2つの場面が印象的だ。夫に離縁されたお栄は、立ち寄った夜鳴きそば屋と妻、おみね(福田温子)との関係を知り、哀切な春画を描写する。それは表層よりも本質を写し、北斎をうならせる。また、花魁(おいらん)の霧里と病床の姉女郎との深甚な因縁を目の当たりにして、「今のあたしじゃ、描けない」と思う。が、ここに、闇の中のまばゆい光を描出した後年の傑作「吉原格子先之図」の萌芽(ほうが)がある。三浦のひたむきな演技に好感が持てる。

 ソフトな不織布(ふしょくふ)や竹を多用して空間を構築した美術(杉山至)が、陰影深い物語を柔らかな質感で包む。

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