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【鑑賞眼】谷賢一が描く肉欲の呪縛… 地人会新社「テレーズとローラン」 

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【鑑賞眼】
谷賢一が描く肉欲の呪縛… 地人会新社「テレーズとローラン」 

左から浜田学、木場勝己、奥村佳恵、銀粉蝶(谷古宇正彦撮影) 左から浜田学、木場勝己、奥村佳恵、銀粉蝶(谷古宇正彦撮影)

 愛欲とエゴイズムの果ての不毛な結末。仏自然主義文学作家、エミール・ゾラが27歳のときの小説『テレーズ・ラカン』(1867年)を、谷賢一が思い切った構成で組み直した(作・演出)。業深き肉欲の呪縛から逃れられない人間の痛々しい姿が浮き彫りにされる。

 いつも通りにラカン夫人(銀粉蝶(ぎんぷんちょう))の家を訪れた元警部、マルタン(木場勝己)は居間で異様な光景を目撃した。夫人の息子、カミーユの妻だったテレーズ(奥村佳恵)と息子の友人で画家志望のローラン(浜田学)が血まみれで死んでいる。椅子にくぎ付けで凝視しているラカン夫人。四肢が動かず、口もきけない状態だが、夫人の眼(まなこ)は告発するように見開かれていた。

 虚弱なカミーユとの味気ない結婚生活から解放されたいテレーズはローランと恋に落ち、2人は舟遊びに行ったときにカミーユを溺死させた。それを知ったラカン夫人は驚愕(きょうがく)のあまり、半身不随になったのだった。

 谷の構成は、事件から時間が遡行(そこう)する形で発端に進む。色調もだんだんと明るくなり、表現主義的な強調のある演出だ。4場構成にし、最後に楽隊風の音楽が流れるのはチェーホフ的。マルタンがランボーやヴェルレーヌの詩を朗唱、20世紀初めの絵画運動「青騎士」の話をするなど小説発表時以降の話を盛り込んで現代に近づけ、詩情あふれる雰囲気を醸し出す。

 奥村と浜田の情交がやや“草食的”で、終盤に男女のキレイな関係に意図的にもっていく。愛が泥沼に陥る前、最初に愛が芽生えた頃の純粋な心に戻れということか。19日まで、東京・池袋の東京芸術劇場。(演劇評論家 河野孝)

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