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【話の肖像画】俳優・佐藤浩市(4)奇をてらえばいいとはき違え

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【話の肖像画】
俳優・佐藤浩市(4)奇をてらえばいいとはき違え

俳優・佐藤浩市 俳優・佐藤浩市

 〈昭和58年の映画「魚影の群れ」(相米慎二監督)は、ワンシーンワンカット撮影で俳優陣から生々しい演技を引き出す相米監督の演出が光る傑作。恋人の父である漁師、房次郎(緒形拳さん)に認めてもらうため、漁師になろうとする青年、俊一を好演した〉

 撮影はきつかったですよ。とにかく、相米監督はOKを出さない。撮影初日は、砂浜に僕と恋人、トキ子役の夏目雅子さんが現れ、小屋に入る、という冒頭の場面だったんですが、全然だめ。何が悪いかすら言ってくれない。

 俊一の喫茶店に緒形さんが入ってきて、2人が初めて対面する場面もOKが出ない。考えあぐねて、近くにあった漫画雑誌を持って、トイレに入ったんです。それで、ドアの開く音を合図にトイレを流して、「いらっしゃーい」と出ていったらOKが出た。映画を見れば分かりますが、緒形さんは店に入ったら僕がいないので驚いています(笑)。

 夏目さんはラストシーンを何度やってもだめで、突然、数え歌を歌い始めたんです。そして「分かんねえじゃーっ」と最後のせりふを叫ぶ。これでOKだった。あんな芝居、計算では絶対に出てこない。すごいなと思いました。

 ただ、僕はこの経験で完全にはき違えてしまい、奇をてらえばいいと思い込んじゃった。「犬死にせしもの」(61年、井筒和幸監督)では、テストの度に僕の芝居が変わるので、照明スタッフが怒り出した。当然ですよ。ライトを当てたところに僕がいないんだから。今は芝居を変えたいときは、事前に伝えます。迷走したけれど、無駄な回り道ではなかったと思っています。

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