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【花形出番です】能楽宝生流二十代宗家・宝生和英さん(1)恩師の一喝で立ち直る

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【花形出番です】
能楽宝生流二十代宗家・宝生和英さん(1)恩師の一喝で立ち直る

能楽宝生流二十代宗家・宝生和英さん(早坂洋祐撮影)

 平成3年、5歳で祖父(十八代宗家・宝生英雄(ふさお))の勤める「西王母(せいおうぼ)」の子方(子役)で初舞台を踏みました。ところが何と、舞台上で寝てしまったんです。

 初孫の僕を溺愛(できあい)した祖父は「これは大物だ」と感心していましたが、父(十九代宗家・宝生英照(ふさてる))には非常に怒られましたね。僕は発達が遅くて、日常の稽古でも父に怒鳴られ通し。仕上げだけ祖父が見てくれましたが、反対に怒られた記憶がありません。

 でも、本当の意味での“初舞台”は母を亡くし、父も病床に倒れた16歳のときだと思っています。それまで人の出入りも盛んで、華やかだった日常が、一気に消えてしまった。多感な時代、能の価値とは何か、家元は必要なのか、と懐疑的になりました。自分は必要とされていないのに惰性で能を続けてもいけない。

 そんな心揺れたとき、亡くなられた佐野萌(はじめ)先生(宝生流シテ方、東京芸大名誉教授)が「お前は下手くそだ。だから、一番頑張らなければいけない」と、はっきりおっしゃってくださった。

 今の僕があるのは、佐野先生のおかげと言っても過言ではありません。僕に最も厳しかった佐野先生のご指導を仰いだことで、僕にハッパをかけてくださる先生方も続出した。ならば、その先生方から芸を奪ってやる。そんな反骨精神で今日まで来られたと思います。

 東京芸大卒業後の20年、22歳で家元を継承しましたが、自分の間違いを認める勇気こそ強さだとも気づいた。周囲にも舞台にも謙虚になれました。(談)

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