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【日本の未来を考える】貿易戦争どう避ける WTOのルール違反も揺さぶるトランプ政権の輸入制限 学習院大教授・伊藤元重 

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【日本の未来を考える】
貿易戦争どう避ける WTOのルール違反も揺さぶるトランプ政権の輸入制限 学習院大教授・伊藤元重 

 トランプ政権の通商政策の特徴は一方的な行動で突き進むということだ。これもアメリカファーストということなのだろうか。一方的な通商政策の遂行は時として保護主義的な政策の応酬にもなりかねない。そうした事態が進めば、WTO体制そのものが大きく揺らぐことにもなる。その場合、日本の被(こうむ)る被害には計り知れないものがある。

 こう考えてみると嫌な思い出ばかりが残っている1980年代から90年代にかけての日米貿易摩擦も、ある意味では非常にうまく処理したとも言える。あの時も米国は理不尽な要求を多く突きつけてきた。米国による一方的な保護主義的政策をなんとしてでも避けたい日本は輸出自主規制や輸入自主拡大などの手法で必死になって対応した。輸出や輸入に介入する手法が好ましいものではないが、それでもなんとか米国の過激な保護主義を抑えることができたという意味では、あの激しい交渉の成果は大きかった。相手が一方的にけんかを仕掛けてきたとき、それにどう対応するのかというのはなかなか難しい問題だ。

 さて、今後の展開はどうなるのか。米国の中でも今回の保護主義的な政策に反対する声も大きいので、世界が貿易戦争まっしぐらに進むわけではない。そうした楽観論もあるようだが、歴史を振り返ってみても保護主義的な声は時として大きな力になることがある。楽観できるような状況にはない。ここは警戒感を持って、WTOやG7などあらゆる場で米国を巻き込んだ形で自由貿易体制を維持するための協議を続けることが重要だろう。協議こそ囚人のジレンマを避ける有効な手法である。日本が果たすべき役割は大きいはずだ。(いとう もとしげ)

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