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最新IoTと徹底した社員教育でオンリーワンの技術を守れ JFE精密が目指すモノづくり

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最新IoTと徹底した社員教育でオンリーワンの技術を守れ JFE精密が目指すモノづくり

 若い世代の人材を育成し、これまで培った技術をいかに継承するか。団塊の世代の大量退職が始まった2012年以降、多くの製造業が抱える課題となっている。その中で、金属部品の製造・加工を手掛けるJFE精密(新潟市東区)はIoT(モノのインターネット)を活用した「ココロシステム」という独自の生産管理システムを開発し、熟練工がいなくても高品質の製品製造ができる生産体制の構築に取り組んでいる。

タブレットとICタグで作業内容を伝達「ココロシステム」

 「ご安全に」。JFE精密の主要事業であるコーティング事業の工場に入ると、女性従業員たちからこんな声をかけられる。安全を呼び掛ける製造工場ならではのあいさつだ。

 同社は常温で金属素材を加工する「冷間鍛造」、粉末化した金属を焼き固める「粉末焼結」、ドリルなどの切削工具や金型に高性能被膜を成膜する「コーティング」の3事業を展開している。その中でも、コーティング事業は他の2事業の工場と比べて、働いている従業員の数は150人と圧倒的に多く、しかも7割が女性という職場だ。

 「パート従業員のように入れ替わりが大きい職場の中で、高品質を保ち、安全に作業をしてもらえるようにするにはどうしたらいいか」。そんな課題の中から「ココロシステム」は生まれたという。

 コーティング事業は、顧客から預かった切削工具や金型に高性能被膜を成膜し、強度や耐久性を高めた上で顧客に引き渡すビジネスだ。「コーティング事業は工具や金型の付加価値を高めます。コーティングをすることで、工具の寿命が延び、企業にとってはコストの節約にもつながるんです」と今藤雄治コーティング事業部長は説明する。

 工場内には11炉のコーティング装置があり、用途に応じて十数種類のコーティング被膜を成膜している。工具一つからでも受注し、最短で1泊2日で作業を終えるなどスピーディーな対応が好評だ。取引先は約千社に上り、全国47都道府県から注文が届くという。

 1日に取引先から宅配便で届けられる注文品は500種類、7000~8000個にものぼる。注文によってコーティングの種類もさまざま。現場の作業は複雑で、経験が求められる部分も少なくない。

 そこで、IoTや近距離通信で情報をやり取りできるRFIDタグを活用することで、経験が浅いパート従業員でもストレスなく作業ができるシステムを構築した。

コーティング工場の従業員は7割が女性だ

 ココロシステムの仕組みは以下の通りだ。

 従業員は、RFIDタグ入りのリストバンドを装着。また、それぞれの注文品が載せられたトレーにもRFIDタグが添えられている。リストバンドと注文品のICカードをそれぞれタブレット端末にかざすと、詳細な作業手順がタブレットに表示され、その手順に合わせて作業を行う。

 タブレットには作業手順のほか、作業上の注意点などもその場で撮影した写真付きで表示できる。作業にミスがあった場合は従業員が同じミスをしないよう注意喚起することもできるという。どの製品を誰が作業をしたのか追跡も可能だ。

 現在、コーティング部門で取り組みが進められているが、将来的に冷間鍛造や粉末焼結部門にも導入を検討している。システムの開発を推進する田村誠也総務部長は「熟練した作業員でないと気が付かないような製造機器の不具合などもセンサーやIoTを活用して察知できるよう『ココロシステム』を発展させたい」と話す。熟練工に頼っていた部分はIoTが対応できるようにし、誰もが働きやすい職場環境を作る―。それがココロシステムの目指す姿だ。

ココロシステムのリストバンドにタブレットをかざす吉田憲司システムプランナー(左)。システムの開発を推進する田村誠也総務部長(右)

社内のエキスパートを講師に独自の「教育システム」

 一方、IoTの導入とともに力を入れる社員教育も独特だ。

 「社内外で新たな課題が発生した時は『ただちに教育をやろう』と決めます。講師は会社の中で、その課題に関して『最も詳しい人』です。詳しい人が社長でしたら、社長にお願いすることになります」と田村総務部長。

 講座の内容は多岐にわたり、「生産管理」「機械加工」「工具の正しい使い方」といった作業現場に関する講座や「情報セキュリティー」「コンプライアンス」などの経営上の課題にも取り組む。当初44項目で始めた教育プログラムは、現在72に達しているという。

 「災害Gメン」と呼ぶ災害対応リーダーの養成講座では4人の受講生を選抜し、1年間、毎月1回講座を開催し、リーダーを養成する。

 「○月○日午前○時に震度7の地震が発生。気温は3度、天気は雪」

 こうしたシミュレーションを立てて、リーダーとして災害時にとるべき対応について考える。「ただ、リーダーに指名しただけでは、実際に非常事態が起きても対応できない可能性があります。講座を通じて繰り返し訓練することでいざという時にリーダーとして率先して対応できるところまで自信と自覚をつけさせます」と田村総務部長は語る。

 講師に指名されると、最初はためらい、戸惑うという。しかし、講座に向けて準備し、自ら勉強するようになる。講座を重ねるうちに講師役の従業員の能力・レベルもアップ。それによって企業の実力が高まることを期待している。

「災害Gメン」育成を目指した教育プログラムの様子

 こうした取り組みからJFE精密が追求するのは、「微差力」だ。モノづくりの現場で、「ちょっとした差」を表す言葉だ。多賀根章社長は「会社の競争力を高める上で、技術だけではない価値を提供することが大切です。『微差力』は、われわれの会社をお客さまに選択していただく上で、重要な要素だと考えています。社員たちはその力を養ってほしい」と訴えている。

会社を支えるオンリーワンの技術

 JFE精密が展開する3つの事業には、ほかの企業が真似できないオンリーワンの技術が数多くちりばめられている。

 もともとJFE精密の前身は1935年に開業した旧日本鋼管(現JFEスチール)新潟電気製鉄所だ。戦後、国際競争が激しさを増す中、高コストの電気炉から撤退。生き残りをかけた新規事業として1980年代からスタートした部品製造事業に事業転換した。後発のため先行メーカーとの競争に勝ち抜こうと、アイデアと開発力を武器にオンリーワンの技術を生みだしていった。

 冷間鍛造は、金属に熱を加えず常温状態で圧力を加えるなどして加工する部品の製造方法で、同社は、主に自動車部品を供給している。

 円柱状に穴の開いた部品の加工では、他社にはできない長さまで穴あけが可能なほか、その内部・外部にスプライン(歯車のような凹凸状の溝)を入れる加工も得意としている。ほぼ鍛造だけで完成品に近い状態の部品を加工できるため低コストなうえ、製品の軽量化などにも貢献しているという。

冷間鍛造工場では、オンリーワンの技術を駆使し、主に自動車部品を製造している

 粉末焼結は、金属の粉末を型に入れ、プレスして部品の形に成形する加工法で、金属の種類によっては落雁(らくがん)のように柔らかい状態のものを焼き固めて部品製造する技術だ。原料となる金属粉末に独自の調整を施し、数ミリグラムの超軽量部品や厚さ0.25ミリメートルの超薄部品の製造を可能にし、携帯電話のカメラ部品や自動巻き時計の回転錘などに採用されているという。

 その中で、現在、売り出し中なのが、通信機器やロボット、EV(電気自動車)、EHV(電気ハイブリッド)自動車に使用される半導体機器が発する熱を放出させる「ヒートシンク材」だ。小型化する半導体機器には不可欠な材料だ。

 一般的なヒートシンク材では、タングステンやモリブデンといった希少金属が使われているが、同社は粉末焼結の技術を活用し、原料価格の安いクロムと銅を使った材料を新たに開発した。従来品と同等の効果を持ちながら、低コストで製造でき、なおかつ、従来品よりも加工しやすい特性を持つ。半導体製品の低価格化に貢献できる材料だけに需要の拡大に大きな期待を寄せている。

粉末焼結の技術で金属粉末(タングステン粉末、クロム粉末など)が精密部品に生まれ変わる(上)。右は、新開発のクロム銅ヒートシンク

 技術開発を担当する寺尾星明常務取締役は「粉末焼結は金属の配合などによってこれまでにない新しい機能を持たせることが可能です。その意味で、アイデアと開発力が勝負の分野。クロム銅のヒートシンク材以外にも新しい種が生まれつつあります」としている。

寺尾常務は「アイデア次第で新しい機能を持たせることが可能」と語る

 こうしたオンリーワンの技術を原動力にJFE精密は事業を成長軌道に乗せ、これまで中途が中心だった雇用も新規採用を拡大させている。また、今後はJFEグループや大学などの公的研究機関との交流をさらに強め、製品開発に競争力を高める考えだ。

 2020年をめどに老朽化が進む社屋や工場棟の本格的な建て替えも検討している。「ココロシステム」や教育プログラムなどの人材活用・人材育成の取り組みを設備のリニューアルに生かす考えで、新しい工場にはIoTを本格導入し、効率的な生産体制の構築を目指す。

「社員たちには夢を持ってほしい」と語る多賀根章社長

 ココロシステムや新規採用によって従業員の考え方を新しくし、工場の建て替えで設備も一新する。「人と設備のニューアルによって、10年先、20年先も永続的に成長できる企業にしていきたい」と多賀根社長は話している。

JFE精密の事業詳細はこちら

(提供:JFE精密株式会社)

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