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【経済インサイド】
下水道から大地の恵み? 国交省が仕掛ける農産物ブランド「じゅんかん育ち」の挑戦
広報活動だけでなく、地方などのグルメイベントに収穫した農産物を出すほか、イタリアで開催されたミラノ万博にもブースを出展。一部の現代用語辞典は「ビストロ下水道」が掲載されるようになった。今回のじゅんかん育ちのブランド化もこうしたイメージ戦略の一環という。
じゅんかん育ちの定着で下水道由来の肥料が浸透すれば、日本の食糧安全保障におけるプラス効果も期待できる。
化学肥料の原料に使われるリン鉱石は現在、ほぼ全量を輸入に頼っているが、世界的な食料需要の増加やリン産出国の輸出制限などで価格は乱高下している。一方で下水道には輸入量の約1割にあたるリンが流入しているといわれており、国際情勢の不安定化が進む中、希少な資源となる可能性を秘めている。
政府は27年に下水道法を一部改正し、肥料の原料となる汚泥の再利用促進を明記。今後も普及を加速させる方針だ。国交省水管理・国土保全局の担当者は「ただ安全というだけでなく、自然の恵みがめぐりめぐって命を育むイメージが伝われば、消費者にとって買いたくなる食材になるのでは。そうなれば日本が新たな資源を手にすることと同じになる」と期待する。(経済本部 佐久間修志)