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【正論】難問残すリーマン・ショック10年 双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦

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【正論】
難問残すリーマン・ショック10年 双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦

双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦氏 双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦氏

 ≪形を変えて続く政治の危機

 国際協調の観点から見ると、08年11月にはワシントンで初めての20カ国・地域(G20)首脳会議が行われている。先進国と新興国が手を取り合い、国際金融危機に立ち向かおうとしたのである。

 それから10年後の今日、金融危機は克服されたものの、世界は新たな難問を抱えている。ポピュリズム政治の横行と、国家間対立の先鋭化である。国内の不満をそらすために他国を非難するような政治が常態化し、今や先進7カ国(G7)さえもが内部対立を深めている。こんな状態で、国際的な金融不安が再燃したらどうすればいいのだろう。

 8月にはトルコ・リラが暴落したが、エルドアン大統領は危機に対応するどころか、トランプ大統領との非難合戦を深めるばかり。これでは国際通貨基金(IMF)も手の打ちようがない。国家間の対立が、新興国通貨のリスクを高めてしまっている。

 加えて米中貿易戦争がある。世界第1位と第2位の経済大国が、相互に500億ドルもの輸入品に25%の関税をかけ合っている。これに比べれば、かつての日米貿易摩擦などは児戯に等しい。当時の日本は、アメリカへの報復関税など考えてもみなかったからだ。

 この10年間を振り返ってみると、経済の危機は確かに克服された。しかしその過程において、いつしか政治の危機が広がっていたのではなかったか。リーマン・ショック後の混乱は、形を変えてなおも続いているのかもしれない。(よしざき たつひこ)

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