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【主張】夏の甲子園 金足農の奮闘に見たもの

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【主張】
夏の甲子園 金足農の奮闘に見たもの

 第100回の全国高校野球選手権記念大会は、大阪桐蔭(北大阪)が決勝で金足農(秋田)に大勝し、2度目の春夏連覇を達成した。

 複数のエース級投手と下位打線まで長打力に満ち満ちた大阪桐蔭の総合力には目を見張るが、記念大会を大いに盛り上げたのは秋田県勢として103年ぶりに決勝に進出した金足農である。

 公立の農業高校の奮闘が、秋田県民だけでなく、全国の高校野球ファンに「おらがふるさと」を感じさせてくれたのではないか。

 午後2時試合開始の決勝戦を待つ甲子園球場は、午前6時半に開門した。地元大阪桐蔭の応援に加えて全国の金足農ファンが詰めかけたためである。

 大阪桐蔭のベンチ入り18人の出身中学は12府県にまたがり、全員が硬式野球の経験者だった。対して金足農は全員、秋田県内の中学の出身で、ほとんどの選手が高校から硬式球を握った。

 大阪桐蔭に代表される強豪校のチーム作りは否定しない。だが、金足農のような地元密着の高校が甲子園の決勝まで勝ち進む高校野球の可能性と多様性が、見る人々を感動させたのではないか。

 金足農を決勝に導いたのは、エースの吉田輝星投手である。

 吉田は県予選5試合と甲子園の準決勝まで5試合を1人で投げ抜いた。さすがに決勝では大阪桐蔭の強力打線につかまったが、この夏、初の降板まで笑顔でマウンドに立ち続けた。それだけに敗戦後の涙が強く印象に残る。

 吉田が甲子園の6試合で投じた球数は、881球を数える。酷暑下での連投で、満身創痍(そうい)であったろう。それでも投げ続けたのは、自らの強い意志である。

 高校野球連盟は、こうした酷使を防止するため投手の球数制限、あるいは投球回数制限の導入を検討している。選手の健康管理を主催者が気遣うのは当然だが、一方で制限導入後は、複数のエース級を持たない金足農のような高校は甲子園で活躍できなくなる。

 それは高校野球から多様性を奪うことにつながらないか。導入には慎重を期してほしい。

 まず優先すべきは開催時期も含めた暑さ対策だろう。優勝候補の地力を持ちながら、先発、救援投手、主軸打者が次々と足を痙攣(けいれん)させ、大会を去った星稜(石川)の悲劇を忘れるべきではない。

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