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【宮家邦彦のWorld Watch】拝啓、習近平国家主席閣下 経済貿易システムを1980年代の日本に学んではいかがですか

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【宮家邦彦のWorld Watch】
拝啓、習近平国家主席閣下 経済貿易システムを1980年代の日本に学んではいかがですか

中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク(ロイター) 中国の習近平国家主席。米中「貿易戦争」に頭が痛い=7月、南アフリカ・ヨハネスブルク(ロイター)

 北京の酷暑と内憂外患で閣下もお忙しい日々をお過ごしのことと推察します。本日は最近米トランプ大統領が仕掛けた「米中貿易戦争」について一筆啓上申し上げます。

 それにしても、ワシントンは一体何を考えているのでしょう。聡明(そうめい)な閣下なら既にご承知と思いますが、今次米中貿易戦争と1980年代の日米貿易摩擦は次の3点で本質的に異なります。第1は政経分離。当時日本政府は経済貿易問題が日米同盟を害さないよう細心の注意を払いました。第2に当時の日本は戦略的に東アジアにおける米国の覇権に挑戦などしませんでした。最後に当時はWTO(世界貿易機関)の前身GATTが一応機能していました。要するに日本は自国経済を国際システムに適応させたのです。その意味で日米対立はあくまで「摩擦」であって「戦争」ではありませんでした。

 これに比べれば今回の米中貿易対立は文字通り「戦争」ですね。トランプ氏の目的は貴国の対米黒字縮小だけではありません。この数年間で米国が中国を見る目は明らかに変わりました。トランプ氏は政経未分離の貴国の戦略自体を問題視し始めています。日米の問題が同盟国間の負担分担だったとすれば、米中は大国間の戦略的競争なのです。

 閣下、私の懸念は今閣下の周辺にこうした米中関係の本質的変化を正確に理解する知恵者がいないのではないかということです。閣下の対米政策については(1)応分の対抗措置を取る(2)WTOなど国際機関で紛争を解決する(3)中国経済の構造改革を進める(4)米中百年戦争を戦う-の4つが考えられます。しかし、今北京から聞こえてくるのは「米国の脅迫には降伏しない」といった勇ましいが無責任な強硬論ばかりですね。

 賢明な閣下なら「戦略のパラドックス」という概念をご存じでしょう。軍事的優位は永遠に続きません。戦いには相手がいます。こちらが成功し続ければ、敵は必ず戦術を変更し、こちらの弱点を突く手段を編み出します。今米国は、まさにこの「逆説」を実行し始めました。貿易戦争で米国に簡単に勝てるなどと過信してはなりません。「戦争」ですから、米国はこれからも理不尽な対中要求を続けるでしょう。ここで中国が過剰反応し、本気で米国に戦いを挑めば、結果はトランプ氏の思うつぼです。今の中国で戦略的に正しい決断を下せるのは閣下以外に考えられません。

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