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【産経抄】8月7日

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【産経抄】
8月7日

 著名人のサクセスストーリーは、世の中にいくらでもころがっている。むしろ手痛い失敗にこそ、貴重な教訓が含まれている。かつての小紙の連載記事「わたしの失敗」はこんなアイデアで始まり、各界を代表する人物への取材は200人近くに及んだ。

 ▼トップを飾ってくれたのが、直木賞作家の山本一力(いちりき)さんである。2度の離婚を経て、事業の失敗で2億円の借金を抱えた。3度目の結婚で得た家庭をどうしたら守れるか。たどりついた結論が作家で身を立てることだった。

 ▼「おれの一生は自転車操業で、こぐのをやめたら倒れる。ただし足は止めないよ」。失敗を乗り越えた山本さんの言葉は心に染みた。もし連載が続いていたら、バドミントンの桃田賢斗(けんと)選手(23)にもぜひ登場してもらいたい。世界選手権男子シングルスで日本勢として初優勝を成し遂げた。

 ▼2年前、当時世界ランキング2位だった桃田選手は、違法賭博問題が発覚して出場停止処分を受けた。試合に出られなかった1年間、所属先のNTT東日本で一社員として事務の仕事に励みながら、地道なトレーニングに取り組んできた。

 ▼復帰直後、ランキングは300位近くまで落ちていた。もっとも、技の鋭さ、体の動きは、以前よりすごみを増し、ここまで快進撃を続けてきた。「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす」。まさにことわざを地でいく、人間的にも格段に成長したエースの姿を見せてくれた。

 ▼違法賭博問題を最初に報じたのは小紙だった。記事が結果的には、メダルも有力視されていたリオデジャネイロ五輪への出場を阻んだことになる。今回の初優勝で、桃田選手は東京五輪の金メダル候補1番手に躍り出た。誰より喜んでいるのは、スクープした記者かもしれない。

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