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【正論】宗教対立の時代こそ「共存」を 東京大学名誉教授・平川祐弘 

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【正論】
宗教対立の時代こそ「共存」を 東京大学名誉教授・平川祐弘 

東京大学名誉教授・平川祐弘氏 東京大学名誉教授・平川祐弘氏

 ≪異教の習合は西洋にもあった

 今度の新しい日本憲法も第一条でこの複数価値の容認を唱えるがいい。日本人の大多数は和の精神を尊ぶ。これは十戒の第一条に「汝我ノホカ何物ヲモ神トスベカラズ」という一神教の排他的な主張と違い、寛容の徳を説いているからだ。

 神道は相手が複数価値の共存を認めるかぎり、他宗教を受け入れた。日本で仏教は神道化し、神道は仏教化した。社会で神仏の間におおむね融和が保たれてきた。仏教は伝教の際、土着の神に気をつかった。京都の寺には隅に必ず小さな祠(ほこら)があり八幡さまが祀(まつ)られている。八幡は武の神で古代西洋でいえば軍神マルスだ。

 しかし都市国家フィレンツェはキリスト教を受け入れ、洗礼者ヨハネを守護聖人とした際、アルノ川の橋のたもとにあったマルスの像を異教の偶像として破壊した。それがよくなかった、そのたたりでフィレンツェは戦争にいつも負ける、とダンテは述べている。

 神仏習合の日本では天照大神を大日如来とする本地垂迹(ほんじすいじゃく)説が行われたが、『神曲』煉獄篇六歌ではキリスト教のゴッドをギリシャ神話の最高神ゼウスだとして、その名で呼びかけている。西洋にも大宗教と異教の神話を習合させた時期はあったのだが、それを知る人は少ない。(ひらかわ すけひろ)

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