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【産経抄】7月26日

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【産経抄】
7月26日

 徳川家康といえば、何より我慢のイメージが強い。といっても、けっして戦いを忌避したわけではない。桶狭間の戦いから、天下分け目の関ケ原の戦いまで、合戦だらけの生涯だった。

 ▼そんな家康の伝記を書いた歴史家の笠谷和比古(かずひこ)さんは、「われ一人腹を切て、万民を助くべし」との副題を付けている。天正12(1584)年の小牧・長久手の戦いでは、豊臣秀吉相手にほぼ勝利を収めていた。

 ▼それでも日々興隆を極める秀吉の求めに応じて、家康は上洛(じょうらく)を決意する。強硬派の家臣に対して、「自分一人が犠牲になることによって、万民を助けることができるだろう」となだめたという。

 ▼「若い頃は織田信長、豊臣秀吉が好きだった。年を取るにしたがって徳川家康の生き方に共感を覚える」。自民党の岸田文雄政調会長は先週、名古屋で行った講演でこう述べた。その岸田氏は、9月の自民党総裁選への不出馬を表明し、安倍晋三首相の3選支持を決めた。自らを家康になぞらえて、一人腹を切ろうというのか。

 ▼昨日の小紙政治面に載った市原すぐるさんの漫画には、思わず膝を打った。サッカークラブの少年12人と男性コーチが救助されて、世界の注目を集めたタイの洞窟が舞台である。救助隊が水たまりに飛び込むように促しても、岸田氏は足がすくんで動けない。漫画が示す通り、戦う勇気がなかった、との印象がぬぐえない。

 ▼岸田氏が率いる宏池会は、政争に弱いことから「お公家集団」と呼ばれてきた。NHKの大河ドラマに登場する公家は、優柔不断で頼りないと決まっている。しかし、幕末の激動期を生きた公家たちの実像は違う。志士たちを煽(あお)り、幕府相手に権謀術数を重ねていた(『公家たちの幕末維新』刑部芳則(おさかべよしのり)著)。

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