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【ガンジスのほとりで】聖なる水と大腸菌 信仰は理屈を簡単に乗り越える

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【ガンジスのほとりで】
聖なる水と大腸菌 信仰は理屈を簡単に乗り越える

インド北部ウッタルプラデシュ州ハープル近郊を流れるガンジス川。自宅にトイレが設置されても河川敷で用を足す人は絶えず汚染は拡大する(森浩撮影) インド北部ウッタルプラデシュ州ハープル近郊を流れるガンジス川。自宅にトイレが設置されても河川敷で用を足す人は絶えず汚染は拡大する(森浩撮影)

 かつて北インドで勢力を誇ったマハラジャ(王侯)は旅行の際、従者に巨大なおけを持たせた。中になみなみと入っているのはヒンズー教徒にとって神聖なガンジス川の水。「旅先での入浴や洗髪も聖なる水以外は使わない」というこだわりを伝える小話だ。あるマハラジャは訪英の際もガンジスの水を銀製のつぼに入れて輸送したという。

 そんな聖なるガンジスは深刻な汚染が問題となっている。政府の調査では中流に位置する聖地バラナシでは基準値の最大20倍の大腸菌が検出されたが、それでもヒンズー教徒にとって重要な存在であることは違いないようだ。先だって北部ウッタルプラデシュ州のガンジス川を訪ねた際も、沐浴(もくよく)をする人、洗濯をする人、遺体を焼く人でごった返していた。

 インド人運転手は久方ぶりにガンジスを目にしたらしく、感慨深い様子だ。川沿いには水を持ち帰るための容器も売っており、喜んで買っていた。どうするのか問うと「くんだガンジスの水を飲んだり、料理に使ったりする」のだという。

 各種報道は知っており、「大腸菌が多いことは理解している」と語るが、かつてのマハラジャのように聖なる水を尊んでいる様子がうかがえる。信仰は理屈を簡単に乗り越えることを、ガンジスのほとりで改めて痛感した。(森浩)

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