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【正論】明治ルネサンスで時代に新風を 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司

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【正論】
明治ルネサンスで時代に新風を 文芸批評家、都留文科大学教授・新保祐司

新保祐司氏(瀧誠四郎撮影) 新保祐司氏(瀧誠四郎撮影)

 ≪戦後は新たな「成金天下」だった≫

 明治100年のときに、『日本の百年』(全10巻)が出た。今、ちくま学芸文庫に入っているが、タイトルは「1 御一新の嵐」「2 わき立つ民論」「3 強国をめざして」「4 明治の栄光」「5 成金天下」「6 震災にゆらぐ」「7 アジア解放の夢」「8 果てしなき戦線」「9 廃墟の中から」「10 新しい開国」となっており、それぞれの時代の特徴をよく捉えたものとなっている。明治は、まさに「明治の栄光」というトーンがふさわしい。

 大正時代を扱った第5巻は、「成金天下」となっている。序章は「金の世の中」であり、その第1節は「成金ブーム」である。「成金とは、将棋の歩(ふ)が敵地にのりこむと一躍金に『成る』ことにたとえた言葉で、日露戦争のあとに生まれた新語である」と書かれている。「成金」の典型の一人、実業家の福沢桃介は、明治の文明開化の先導者、福沢諭吉の娘婿であった。「一身独立して一国独立す」と言った福沢諭吉の明治から相場師として株で財産を作った福沢桃介の大正という時代への変転こそ、この2つの時代のトーンの違いをはっきり示すものはない。

 第7節の「成金没落のあとに」には「金に成っても所詮(しょせん)は歩。成金とははじめから没落を予想しての渾名(あだな)かも知れない」と書かれているが、大正時代のトーンとは、このような空疎な響きであった。「大正デモクラシー」とは、このような「成金天下」の時代精神から発生したものにすぎなかった。

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