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【正論】航空会社服従させる中国の強圧 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

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【正論】
航空会社服従させる中国の強圧 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

 中国の航空当局が4月、世界各国の航空会社44社に対し、台湾を「中国台湾」と変更するよう圧力をかけた。従わなければ中国の国内法に基づき処罰するという。北京の求めに応じた会社には日本航空と全日空も含まれる。

 米国のトランプ政権は自国の航空大手に乱暴な要求に応じないよう要請し、日本も菅義偉官房長官が「民間企業の活動に対し、強制力をもって特定の政治的立場に基づいた措置を取ることを要求するのは好ましくない」と懸念を示した。強硬姿勢を強める中国は、要求をさらに広げる恐れもある。

 ≪大陸とは無縁だった南洋文化

 中国は台湾を「中国の固有の領土」だと主張する際、「台湾人民も中華民族だ」とするスローガンをよく口にする。しかし、これは全く成立しない。台湾に古代から住んできた先住民はポリネシア系の人々で、彼らが築き上げたのは南洋文化である。

 一例を挙げよう。台東市に台湾史前文化博物館(National Museum of Prehistory)があり、ここでは戦前の日本人考古学者らが先鞭(せんべん)をつけた卑南遺跡からの出土品が展示されている。展示品の中には中心に穴の開いた巨大な円形の石がある。人類学でいう石貨(せきか)である。

 石貨はミクロネシア連邦のヤップ島を中心に、南洋の人々が婚姻関係を締結する際に用いられる貴重品だ。男性側からは貝貨が、女性側から石貨がそれぞれ相手に贈られ、広大な海域に平和な社会関係が維持される。

 台湾の先住民は地球上、最も北に住むオーストロネシア語族の言語を操る集団で、石貨も南洋文化的な特徴を表している。当然、こうした南洋文化は大陸の中華とは無縁だったし、中華文明が台湾島を一方的に上塗りしていった事実もない。先住民の暮らす島は海上の交通路にあったため、さまざまな人々が漂着したのも事実である。大陸南部から●南(びんなん)人や潮州人、それに客家と称する集団も近世になってから上陸した。しかし、彼らが自分たちを「中華民族」とする認識はなかった。

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