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【主張】外国人受け入れ 「安価な労働力」は誤りだ

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【主張】
外国人受け入れ 「安価な労働力」は誤りだ

 安倍晋三政権が外国人労働者の受け入れ拡大へ、政策の舵(かじ)を大きく切り始めた。

 一定の専門性や技能を有し、日本語能力を身に付けた人を対象に在留資格を新設する。

 帰国後に母国で活躍する人材の育成-を名目とした技能実習制度や留学生が、実質的には低賃金の単純労働者を確保する手段として悪用される例が多い。

 新制度には、こうした状況を改善する側面があるものの、真の狙いは少子高齢化に伴う恒常的な人手不足への対応だろう。

 なし崩しに受け入れを拡大してきたこれまでの手法は、さまざまな課題をはらんできた。どの分野でどれだけ受け入れるのか。安倍首相は早急に、中長期的な戦略を示す必要がある。

 当面は農業、介護、建設、宿泊、造船の5分野で、2025年頃までに50万人を超える人材の受け入れを目指すという。

 もっとも、少子化による人手不足はこの5分野だけにとどまらない。日本の勤労世代が1千万人単位で減っていくことを考えれば、すぐにわかることだ。

 要望のある職種について、すべて受け入れていくことが果たして可能なのだろうか。

 安倍首相は「移民政策とは異なる」との立場は変えていない。在留期間の上限を通算5年にするという点に示されるが、それは若い労働力を循環させようという発想だ。家族の帯同も認めない。

 だが、外国人労働者を必要としている国は少なくない。日本の都合だけで、安定的な人数をどこの国から確保できるのだろうか。

 外国人労働者への依存度が高まった段階で、当て込んだ人数が来日しないことも考えておかなければ、社会は大混乱する。

 多くの人材を送り出している国と外交上の衝突などが起これば、労働者が一斉に引き揚げてしまう事態もあり得るのだ。

 それ以前の問題として、彼らを「安価な労働力」と見なすのは大きな誤りだ。技能実習生をめぐる違法残業、賃金未払いなどの法令違反は後を絶たない。

 新制度が過酷な単純労働の受け皿に変質することのないよう、厳しい監視が必要である。

 互いに生活ルールや習慣の違いを乗り越えなければ、対立や分断が生じる。外国人へのさらなる寛容さを持てるか、も問われる。

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