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【オリンピズム】嘉納治五郎と幻の東京大会(12)揺らぐことのない信念

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【オリンピズム】
嘉納治五郎と幻の東京大会(12)揺らぐことのない信念

 東京では、花火が上がり、祝賀祭が続いたという。その陰で、嘉納とともに招致を戦い抜いた外交官が、IOC委員を辞任している。杉村陽太郎だった。ムソリーニへの働きかけに対して責任を取ったという見方がある。東京への懸念材料を少しでも減らそうと考えたのではないか-。

 杉村は、六段という段位を持つ講道館門人というだけでなく、嘉納塾で起居を共にして薫陶を受けたまさに嘉納のまな弟子。日本が国際連盟を脱退するまで同事務局次長を務めており、嘉納の国際協調思想を理解する杉村にとって脱退は無念だったろう。その分、五輪への希望は膨らんでいたかもしれない。

 ようやく五輪開催を勝ち取った日本。今後の大会準備について米国の放送局から「ドイツに準じるのか」と問われた嘉納は、興味深い回答をしている。「若しも総(すべ)ての国が他を凌駕(りょうが)する事に努めるならば限りない。かくてオリムピック精神も又経費の濫費の為(ため)に失はれるに至るのであらう事を恐れる」と。五輪肥大化への懸念を、すでに抱いていたのだ。=敬称略 (監修 真田久筑波大教授 構成 金子昌世)

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