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【正論】中華文明から民主化は生まれず 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

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【正論】
中華文明から民主化は生まれず 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

静岡大学の楊海英教授 静岡大学の楊海英教授

 それに「改革開放」や「社会主義市場経済」などと言葉遊びはできても、国有企業の民営化など経済の抜本的な改革は一向に進まない状態は永遠に続く。これらの構造的な問題はすべて中国の歴史に淵源(えんげん)している。本質論のように見えるかもしれないが、古い中華文明を近代世界に導く「良薬」はまだ見つかっていない。

 ≪「発展」しても弾圧は変わらない

 「天安門事件」は欧米や日本の中国に対する過剰な期待を粉砕したことで、世界史的な意義を有している。その期待感とは、中国も豊かになれば、早晩、民主化するという発想であった。結局、現代中国は国内総生産(GDP)が世界2位を誇るまでに「発展」しても、市民の権利を守ろうとする弁護士を大量に逮捕して投獄し、少数民族に対する苛烈な弾圧を少しも緩めなかったのではないか。

 一部の中国人は確かに豊かになった。金持ちになったのはほかでもない、8千万人もの中国共産党員たちである。世界一の金持ちの政党は決して人民の人権を優先的に考えておらず、体制維持に勤(いそ)しんでいる利益共同体である。共産党員たちは確かに経済的には「中産階級」にあたるが、彼らの数がいくら膨れ上がっても、体制内部から民主化を推し進めていく力にはならない。

 というのも、「中産階級」には何ら権限がなく、ピラミッド型専制主義体制の頂点に立っているのが、習近平氏であるからだ。彼がいなくなっても、次の「皇帝」がまた中華文明の土壌から生まれてくるからである。(よう かいえい)

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