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【正論】中華文明から民主化は生まれず 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

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【正論】
中華文明から民主化は生まれず 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

静岡大学の楊海英教授 静岡大学の楊海英教授

 民族は共通の心理と経済的基盤、それに共通の文化によって結束する、というスターリンの定義は正しかった。皮肉にも「搾取階級」も「無産階級」も、自民族に対する愛情の方が異民族の同志に対する愛よりもはるかに強かった事実が、階級闘争論の誤謬(ごびゅう)性を証明した。かくして、共産主義体制はマルクスの当初の予言通りに「幽霊のように」ユーラシアから消え去っていった。

 ≪独裁体制を繰り返す中国革命

 ひるがえってアジアを回顧した場合、天安門広場で市民と学生に銃口を向けた中国は89年からかえって、その異質性を際立たせた。何よりも、暴力で自国民の正当な権利を抑え込んだ手法は明らかに世界の潮流と逆行している。

 「若い学生を弾圧する者は、軍閥だ」と青年時代の毛沢東は発言して、革命家たちを鼓舞していた。しかし、彼を指導者とする中国共産党が北京に入城して、少し前まで清朝の皇帝が温めていた皇帝の座に君臨しても、目新しいヒューマニズムの思想は芽生えてこなかった。口先だけでマルクス・レーニン主義を標榜(ひょうぼう)しても、しょせんは2千年の独裁主義体制内で繰り返されてきた、前近代的な王朝交代劇にすぎなかった。それが中国革命である。

 王朝交代の度に大量殺人が反復される原因の一つに、厳密な意味での封建制度が中国にはなかったことがある、とウイットフォーゲルや梅棹忠夫ら東西の偉大な先学たちは指摘していた(『東洋的専制主義』『文明の生態史観』)。

 地方分権的な封建制度の欠如は政治的には中央集権化をもたらし、個人の独裁を生む。そして経済的には資本主義に移行できず、国民全体が裕福になる道が遮断される。中国共産党は「革命」を成功させたと宣言しても、毛沢東とトウ小平、それに習近平氏のような独裁者こそ輩出できたものの、民主化には変身できないでいる。

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