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【産経抄】5月25日

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【産経抄】
5月25日

 陸軍大将、今村均(ひとし)の生涯を描いた角田房子さんの『責任』に、こんな場面がある。ラバウルで敗戦を迎え、戦犯となった今村と部下の参謀長は口論を始めた。「責任は当然私が負うべきだ」「いや、命令した私の責任だ」。

 ▼まもなく始まる裁判で、お互いが相手の罪を少しでも軽くしようとしていた。参謀長は無罪放免となり、今村はその後9年間、獄にあった。日本に送還された後も、わざわざ赤道直下の炎暑の島の刑務所に戻っている。部下とともに服役したいと、申し出たのだ。

 ▼「すべては私の責任です」。「悪質タックル」問題で、日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督(62)は、こう言い切ったはずだ。しかし23日夜の会見では、「私からの指示ではない」と、宮川泰介選手(20)の発言を真っ向から否定した。

 ▼ともに会見に臨んだ井上奨(つとむ)コーチ(30)は、関学大のクオーターバック(QB)を「潰せ」と命じた事実は認めたものの、「ケガをさせろ」という意味ではないという。まるで2人の指導者の真意を曲解して、選手が勝手に暴走したといわんばかりである。宮川選手は前日の会見で、自分の犯した罪を受け止めて覚悟を決めているように見えた。それに対して内田氏には、身を守る姿勢ばかりが目立つ。

 ▼今村は釈放後、自宅の庭に三畳の掘っ立て小屋を造らせ、自分を“幽閉”した。角田さんによれば、多くの部下を死地に投じた「その罪責だけを見つめ、それを日常の行為に現わして生きた」。

 ▼内田氏は会見後、心労と不眠で入院したそうだ。なにも「昭和の聖将」とまでたたえられた人物を見習えとは言わない。一日も早く健康を取り戻して、分別ある大人らしい、責任の取り方を見せてほしい。

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