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【産経抄】5月22日

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【産経抄】
5月22日

 神奈川県茅ケ崎市にある「茅ケ崎館」は、明治32年創業の日本旅館である。日本映画の巨匠、小津安二郎監督の仕事場として有名だった。「東京物語」や「早春」など名作のシナリオは、ここで生まれた。

 ▼「やっぱり映画は、ホームドラマだ」。家族の映画を撮り続け、今も世界中で根強い人気を誇る小津監督が残した言葉である。やはり茅ケ崎館で脚本を執筆する是枝裕和監督(55)も、家族をテーマにした問題作を次々に世に送ってきた。

 ▼平成16年公開の「誰も知らない」では、母親に置き去りにされた4人の兄妹たちの姿を描いた。「そして父になる」(25年)は、ともに過ごした時間は血のつながりを超えられるのか、と重い問いを観客に投げかける。欧米でも高い評価を受け、「OZUの孫」とも呼ばれてきた。

 ▼今回はついにカンヌ国際映画祭で、「万引き家族」が最高賞の「パルムドール」を獲得した。もはや誰の孫でもない。衣笠貞之助、黒澤明、今村昌平各監督ら、過去に受賞した巨匠たちに続いて、歴史に名を残す快挙である。

 ▼「万引き家族」は、都会の片隅でひっそりと暮らす家族が主人公だ。祖母の年金と父と息子の万引で生活が成り立っている。貧しいながら仲の良い家族は、ある事件をきっかけに引き裂かれていく。是枝映画の集大成となる作品は、審査員をして「恋に落ちた」とまで言わしめた。

 ▼もっとも映画祭は、賞を争うだけの場ではない。往年の名作の上映会も行われる。65年前に製作された「東京物語」は、最新デジタル技術による修復版が披露された。こちらは、かつて世界中の映画監督の投票によってベスト映画に選ばれている。新旧のホームドラマの傑作を見た人の感想が聞きたかった。

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