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【産経抄】5月11日

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【産経抄】
5月11日

 新天地で第二の人生を謳歌(おうか)するシニア世代の姿を描いた『人生の楽園』(テレビ朝日系列)という人気番組がある。マレーシアで長く首相の座にあったマハティール氏も、そんな余生を夢見た日があったのか。

 ▼もともと1961年に初めて訪れて以来、日本の大ファンである。公式訪問のほか、北海道から沖縄まで、プライベートで訪れた地は数知れない。食べ物では、「日本のパンが世界一おいしい」と評価していた。首相退任後80歳で挑戦したのが、日本風のパン作りである。

 ▼生まれ故郷に近い北部のランカウイ島に開店したパン店の名は、「ザ・ローフ」。あんパンやクリームパンが人気だった。しかし、マハティール氏にとっての楽園は、やはり政治の世界にしかなかったようだ。今年4月、国内で展開していた12店全てをたたんだ。

 ▼2年前に与党と決別していたマハティール氏が、野党連合を率いて再び政権の座につくためである。9日に投開票された連邦下院選で、議席の過半数を獲得し、57年の独立以来、初の政権交代が実現した。92歳のマハティール氏が、首相に返り咲くことになった。

 ▼かつて22年間に及んだ長期政権のスローガンは、「ルック・イースト(東方)」だった。戦後、奇跡的な復興を遂げた「日本に学べ」と、国民を叱咤(しった)激励し経済発展をもたらした。もっとも今、東方といえば、経済大国となった中国を指す。マハティール氏は、巨額のインフラ投資に依存して、中国一辺倒となったナジブ前首相の外交政策を批判していた。

 ▼とはいえ中国を含めた全方位の外交をめざす、マハティール氏の前途も厳しいものになりそうだ。せめて来日の折には、お気に入りのパンを心ゆくまで堪能してもらいたい。

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