産経ニュース

【主張】日報と自衛隊 機能する態勢を整えよ 「特別な文書」の位置付けを

ニュース コラム

記事詳細

更新

【主張】
日報と自衛隊 機能する態勢を整えよ 「特別な文書」の位置付けを

 「ない」と説明しながら、実際には存在していた。陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報をめぐるその繰り返しで、防衛省が厳しい批判を浴びている。

 イラク、南スーダン派遣の日報問題で、ずさんな公文書管理が問われるのは当然である。

 同時に浮かぶのは、国民を守る態勢を、果たして政府や防衛省自衛隊がとれているか、という懸念である。そこにこそ、より大きな問題があるといえよう。

 国会に対する説明が混乱し、野党の追及を受けている。だが、自衛隊を一般行政機関と同列視し、その文書も同じく扱おうとすることは正しくない。

 ≪情報管理の徹底求める≫

 防衛や国際貢献の任務を果たす上で、困難が生じているからである。その観点を忘れずに改善を図ることが求められる。

 公表されたイラク派遣日報は、435日分、1万4929ページにのぼる。陸自研究本部(現教育訓練研究本部)などに保管されていたが、国会質疑での要請や情報公開法上の開示請求に対し、1年以上も「ない」と説明してきた。

 明らかなルール違反であり情報管理の徹底が求められる。防衛省自衛隊が反省し、小野寺五典防衛相が謝罪するのは当たり前だ。

 ただ、問題を公文書管理の不手際だけに限定してはなるまい。

 指揮命令系統は自衛隊の生命線である。稲田朋美防衛相(当時)の指示が明確な形で伝えられず、自衛隊の各組織には日報の探索を人ごとのようにみる姿勢もうかがえた。組織が劣化している。

 イラク派遣日報の保存期間が当時、「1年未満」でその後の破棄を規定していた点は、軍事組織として不適当といえよう。日報は「戦訓」を学び取る資料だ。長期保存が望ましく、イラク日報に欠番があること自体、残念だ。

 日報を他の行政文書と同列に扱う今の制度自体の問題もある。

 日報には人道支援活動の進め方や隊長を含む部隊の行動が記されていた。敵対的な国やテロ勢力が分析して自衛隊の行動パターンを読み取れば、自衛隊や隊員の安全が将来にわたって脅かされる。

 南スーダンの日報にいたっては、派遣が続いているさなかに情報公開請求があった。

 一般行政文書と同じにしているから、開示が求められた。妥当ではない。1万5千ページに近い日報をチェックし、外国から提供されたインテリジェンス情報などを黒塗りにする作業は、自衛隊の中枢である幕僚監部を中心に行われた。北朝鮮情勢への備えに全力を尽くすべきときに、招きたくなかった事態である。

 国際貢献は今後も求められ、安全保障関連法に基づく重要影響事態や有事の作戦行動もありえる。それらの日報を行政文書として開示するというのか。安全確保と任務遂行を損なってはならない。

 ≪「戦闘」の混同をするな≫

 秘密保護法に基づく特定秘密に指定するとの考えがあるとすれば、現実的ではない。指定によって扱いが厳格になり過ぎ、自衛隊内での活用は難しくなる。

 守られるべき軍事情報である日報は、他の行政文書とは異なる性格だと位置づけ、保護と活用を両立すべきだ。国民の財産である以上、数十年後の公開が必要だ。

 公表されたイラク日報には、自衛隊が活動していたサマワ周辺での、他国軍と武装勢力などの「戦闘」の記述があった。イラク復興支援特別措置法は自衛隊は「非戦闘地域」で活動すると定めた。

 派遣はイラク特措法に反していたのではないかという野党の指摘は、正しくない。

 日報上の「戦闘」は、長く使われてきた軍事用語で、世界標準といえる。この言葉を用いなければ簡潔明瞭に報告できない。

 イラク特措法上の「(非)戦闘地域」の概念は、自衛隊の海外での武力行使を禁ずる憲法などに由来する。「国または国に準ずる組織」の意思に基づく、計画的で十分大きな規模の戦いでなければ「戦闘地域」にならない。日報を読めばどれも偶発的、小規模なもので、該当しない。

 これらを混同するような議論はおかしいが、政府の用語にも問題がある。「戦闘地域」など誤解を招く用語を改めてもらいたい。

 日報の「戦闘」の記述は、だからこそ自衛隊の派遣が必要で、日本を代表して厳しい任務に当たっていたことを示している。

「ニュース」のランキング