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【産経抄】4月22日

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【産経抄】
4月22日

 宴(うたげ)の締めくくりを「終わり」と言わず「お開き」と言う。弔事では「返す返すも」などの重ね言葉が疎まれる。「するめ」を「当たりめ」と呼ぶのは、「(金銭を)する」の響きを嫌った博徒の験担ぎに由来する。

 ▼忌み言葉を巧みな言い回しで避ける。これは、庶民の知恵であろう。権力者が同じことをすれば国民への欺瞞(ぎまん)に転じてしまうのは、時の古今を問わない。核開発と経済建設を両立するという無謀な「並進路線」は、かの独裁者いわく「偉大な勝利」を収めたらしい。

 ▼北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長である。内外に発した核実験や大陸間弾道ミサイルの発射実験中止は、南北会談や米朝会談への友好的な布石と思いきや、何のことはない。自国への「核の威嚇がない限り、核兵器を絶対に使用しない」と核保有国を宣言している。

 ▼経済制裁による国情の疲弊が伝わる中、かくも居丈高なのは、政権幹部にも国民にも弱みを見せられぬ独裁者の悲しさか。取り急ぎ核実験などの中止という体裁を整え、経済援助を引き出したいとの本音が色濃くにじむ。「勝利」は、内向けの方便でしかあるまい。

 ▼金氏は、旧ソ連製などの旅客機を専用機としている。いずれも長い距離は飛べないという。忌み言葉を嫌う金氏なら「レトロ趣味」とかわすかもしれないが、米朝会談の開催予定地が北に近いモンゴルや東南アジアと噂される裏に、お寒い台所事情が透けて見える。

 ▼独裁者に振り回される北の人々はいい面の皮だろう。軍備に傾けられた国力が、市井の暮らしに振り向けられていればと返す返すも惜しまれる。国際社会の取るべき道は一つ、これまで通り締め付けを続けるのみである。核の放棄を見る日まで、めでたく「お開き」とはいかない。

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