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【台湾有情】「一つ」でない豪州の中華系社会

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【台湾有情】
「一つ」でない豪州の中華系社会

 オーストラリア・シドニーの“中国人街”で、台湾人女性が「一つの中国」を理由に嫌がらせを受けたという件を取材するため、現地の商店を訪れた。仏頂面でレジに座っていた「老板娘(女性店主)」は、中国語(北京語)で話しかけると急に愛想が良くなり、中国大陸なまりの言葉であれこれ話してくれた。

 水を1本買ったせいかもしれないが、気を良くして次の店で高齢の男性店主に話しかけると、今度は要領を得ない。「中国語、話せないんですか」と聞くと、そうだと言う。

 しまった、そうだった。中華系団体幹部を取材した際も「親の出身地の広東語か英語しか話せない」と言われ、先方より下手な英語で質問したのを思い出した。店主は英語もできそうにない。もう1本増えた水を手に店を後にした。

 中国語は台湾で「国語」と呼ばれ、発音は中国大陸と異なる。こんな街で台湾の若い女性が働けば、言わなくても台湾人と分かるはず。だが、嫌がらせ問題でさぞかし怒っているに違いないと感想を聞いた台湾人企業家は「名前は書かないで」と及び腰だった。同席者は「彼は中国人と商売しているから」と解説した。

 なんとも複雑な豪州の中華系社会。そこに暮らす人々の生活は、単純に「一つの中国」では片付けられそうになかった。

(田中靖人)

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