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【正論】
北「非核化」の策略に騙されるな 平和安全保障研究所理事長・西原正
北朝鮮の核をめぐる緊張が急転直下、緩和に向かっているように見えるが、この先は分からない。
今年に入って、金正恩朝鮮労働党委員長は北朝鮮の非核化を表明して、中国を電撃的に訪問し、習近平国家主席と会談したほか、4月下旬~6月初旬の間に韓国の文在寅大統領、米国のトランプ大統領と会談する予定だ。昨年秋には予想できなかった展開である。
しかし、本当に北の非核化は進むのだろうか。また、こうした状況にあって日本は今、何をすべきだろうか。
≪条件付けは「いつか来た道」≫
金正恩氏は3月26日の習近平氏との会談で、自国の非核化を進めるにあたって条件を付けた。中国外務省は同28日、金正恩氏が「(米韓が)われわれの努力に善意で応え、平和実現に向けて段階的で歩調を合わせた措置を取るなら、半島非核化問題は解決できる」と述べたと伝えた。これは北朝鮮の一方的な核廃棄ではなく、米韓側の緊張緩和策が同時並行で進むことを条件にしたものだ。
さらに4月7日になって中国の外交筋は、金氏が習氏との会談で米韓側に確実な体制保証、制裁の解除、大規模な経済支援などを求めると述べたと伝えた。これはまさに「いつか来た道」である。1994年の米朝枠組み合意以来、米側がつねに騙(だま)されてきた道の繰り返しに映る。