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【産経抄】4月13日

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【産経抄】
4月13日

 カリブ海の島国キューバは3年前、仇敵(きゅうてき)だった米国と54年ぶりに国交回復を果たした。といっても、共産党の一党独裁体制は変わらない。経済の苦境も続く。ただこの国の自慢は、国民が無料で受けられる医療制度である。

 ▼他国への医療支援にも熱心に取り組んできた。西アフリカでエボラ出血熱が大流行したときも、他国を圧倒する規模の緊急医療チームを送り込んだ。キューバ革命の闘士、チェ・ゲバラの夢が実現したといえる。ゲバラは、もともと医師だった。

 ▼シリアのアサド大統領も、医師の資格を持つ。眼科医としての専門教育を受けるために、ロンドンにも留学していた。同時に独裁者として30年間君臨した前大統領の次男でもある。兄が交通事故死したため、英国から急遽(きゅうきょ)呼び戻されて後継者に据えられた。西欧文明に造詣の深い人物なら改革を進められるのではないか。欧米諸国の期待はまもなく失望に変わった。

 ▼父親同様に、反対勢力を容赦なく弾圧した。多数の市民の犠牲もいとわない。2011年に内戦が始まってからは、何度も化学兵器を使用した疑惑がもたれている。事実の解明は、アサド政権の後ろ盾となっているロシアの妨害によって一向に進まない。

 ▼医学知識のあるアサド氏は、化学兵器の恐ろしさを重々承知しているはずである。昨日の小紙に掲載された写真は、シリア政府軍が化学兵器を使用したとみられる攻撃後の惨状を伝えていた。呼吸困難に陥った子供たちが、苦しげな表情で人工呼吸器を口にあてている。

 ▼米国のトランプ大統領は、化学兵器使用を「容認しない」として、シリア攻撃の検討を始めている。アサド大統領に直接聞きたい。こんな国にするために、あなたは医師の道をあきらめたのか。

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