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【産経抄】
3月22日

 動物学者の今泉忠明さんの著書『絶滅動物誌』を読むと、人類がいかに多様な生物を滅ぼしてきたかよくわかる。かつて北大西洋上に集団で生息していた、ペンギンそっくりのオオウミガラスも、今は剥製が残るのみである。

 ▼探検家に羽毛の有用性と卵のおいしさを知られて、運命が変わった。群がってきたハンターたちに、巣は破壊しつくされた。1844年6月3日、最後のオオウミガラスが殺された日付までわかっている。

 ▼ケニア中部の自然保護区で19日、キタシロサイの地球に存在していた最後の雄が病死した。45歳、「スーダン」と名付けられていた。同じ保護区に2頭の雌がいるだけである。子孫を残すには、遺伝子を利用した体外受精に頼るしかない。

 ▼1960年代には、アフリカ中部で2000頭以上のキタシロサイが確認されている。角の存在が不幸を招いた。70年代からベトナムや中国で、漢方薬として珍重されるようになったからだ。闇市場では1キロ当たり、日本円で800万円以上の高値がつくとあって、密猟が横行してきた。「スーダン」も安全のために、角を切り取られて保護されていた。キタシロサイに限らず、すべての種類のサイが、絶滅の危機にさらされている。

 ▼今泉さんは、児童書としては異例のミリオンセラーとなった『ざんねんないきもの事典』の監修も担当している。サイの角についても、興味深い記述がある。髪の毛や爪と同じ成分でできている、「ただのいぼ」にすぎないというのだ。つまり漢方薬といっても、「そのへんのおじさんの爪をせんじて飲むのと大差ありません」。

 ▼なんとおろかな理由で、サイの命を奪ってきたことか。人間こそ、「残念な生き物」にほかならない。

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