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【オリンピズム】冷たい戦いを超えて(20)自由追求できる世界を守る

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【オリンピズム】
冷たい戦いを超えて(20)自由追求できる世界を守る

“炎のランナー”から100年、2024年五輪の開催都市に決まり、喜ぶパリのアンヌ・イダルゴ市長(前列右)=2017年9月、リマ(ロイター) “炎のランナー”から100年、2024年五輪の開催都市に決まり、喜ぶパリのアンヌ・イダルゴ市長(前列右)=2017年9月、リマ(ロイター)

 映画は主人公が英国人であったことから6年前のロンドン五輪でさまざまな形で活用された。だが、パリ五輪であったことがもう一つの現実へとつながる。2024年の開催が決まったパリ五輪はリデルらの活躍からちょうど100年。再び五輪の理想が語られる大会となるだろう。

 戦前は欧州の貴族がアマチュア精神を掲げてスポーツを謳歌(おうか)した時代だった。戦後、事情は大きく変わっていくが、英国陸上界の名選手で1964年東京五輪の銀メダリスト、エイドリアン・メトカーフは「スポーツは音楽や数学と同様、人生に欠くべからざるものである」と語った。どの時代でも、文武、相通じるところを示す言葉だ。

 そのメトカーフを継ぐ、同じ英陸上選手のセバスチャン・コーは「五輪のメダルと世界記録とどちらを取るか」とよく尋ねられた。コーの答えは伝記『ランニング・フリー』に記されている。「五輪は能力を決めるものである必要はない。自分の力を正しく示しているのは世界記録だ」

 コーが目指したものは、なんら制約なく自由に走ることだった。「どんなスポーツでも、スポーツマン精神と自らの意思による決定、自由を追求できる環境が守られていなければならない」。そして、自由を守るには監視を怠ってはいけないと訴えた。

 自由を尊重する意識。冷戦時代の五輪を振り返って、世界の行き着くところはいまもここにあると思う。=敬称略〈おわり〉(蔭山実)

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