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【日曜に書く】祝・オキノタユウの完全復活 〝人間の欲望〟で絶滅寸前に追い込まれた「悲しい歴史」とは 論説委員・長辻象平

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【日曜に書く】
祝・オキノタユウの完全復活 〝人間の欲望〟で絶滅寸前に追い込まれた「悲しい歴史」とは 論説委員・長辻象平

アホウドリを旧名に

 戦後の再発見時から使われてきた島の南東部崖下のコロニーは、土砂崩れが起きやすくて繁殖地としての限界が見えているが、彼らの模型(デコイ)を置いて誘導した北西部緩斜面のコロニーは土地も広く、今後も大幅増が期待できる新天地だ。

 「ここまで回復すれば、鳥島が噴火してもオキノタユウの種としての存続が脅かされることはないでしょう。彼らには過去の噴火を乗り越えてきた逞(たくま)しさがありますから」

 5月に長谷川さんは海原に旅立つ幼鳥たちを鳥島で見送る。「11月には繁殖つがいが千組を超える。それを見届けて、ぼくは鳥島での野外調査から引退します」と胸の内を明かしてくれた。大きな区切りの訪れだ。

 復活を記念してアホウドリという和名を改めてはどうか。人間の欲望が絶滅寸前に追い込んだ生物に対してあまりにひどい名だ。長谷川さんは古名のひとつの「オキノタユウ」を用いて調査報告や本を書いている。上田敏もボードレールの詩に登場するこの海洋鳥を「をきのたいふ」と訳した。優雅な響きだ。(ながつじ しょうへい)

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