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【正論】貴乃花は「忠実義務違反」なのか 印象操作のため概念が利用された印象強い 早稲田大学教授・上村達男

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【正論】
貴乃花は「忠実義務違反」なのか 印象操作のため概念が利用された印象強い 早稲田大学教授・上村達男

早稲田大学教授・上村達男氏 早稲田大学教授・上村達男氏

 しかしこれとは別に、一方が他方を全面的に信頼するしかない法的な関係がある。これには生まれたばかりの子供と親権者、医者と患者、弁護士と依頼人など、そこには信認の度合いに応じたさまざまな状況がある。このように一方的に信認を受ける者(受託者)には信認者に対する強い誠実義務、受託者責任が課せられる。

 昔のイギリスの厳格な原則は、例えば財産を有する子供と親権者との間では資産の売買・贈与その他の契約をすること自体が禁止された。まさに李下(りか)に冠を正さずである。そうした契約をすればそれは直ちに無効であり、責任は常に無過失責任で、得た利益は無条件返還である。

 現在では受託者責任は両者の関係に応じてこうした厳格なものばかりではないが、誠実義務という基本線は維持されており、その誠実義務の具体的な表現の一つが忠実義務である。忠実義務とは利害が衝突した場合には、もっぱら信認者のためにのみ行動すべきだという法的な概念である。

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 もっとも、他人の財産を預かる者の資産運用責任などの場合も含めて、こうした誠実さの証明はそれのみでは非常に難しい。その証明を容易にするために、資産の分別保管義務、監査証明義務、情報開示義務、自己決定義務、分散投資義務などの外形的義務が観念されている。国民の老後の生活を支える年金の運用責任などは、常にこうした厳しい責任との関係で論じられなければならない。

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