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【日の蔭りの中で】西部邁さんの不動の精神 保守主義の根底にモラリズム 京都大学名誉教授・佐伯啓思

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【日の蔭りの中で】
西部邁さんの不動の精神 保守主義の根底にモラリズム 京都大学名誉教授・佐伯啓思

講演する西部邁さん=2010年3月29日、奈良市(前川純一郎撮影) 講演する西部邁さん=2010年3月29日、奈良市(前川純一郎撮影)

 去る21日、西部邁(すすむ)さんが逝去された。以前より自死の可能性を公言されていたので、一報を聞いても強い驚きはなかったが、私にはひとつの時代が終わったという実感が襲ってくる。

 自裁死というそのやり方について戸惑いもあるかもしれない。しかし、西部さんほど、徹底して物事を考え抜き、自らの意思の統率のもとに置こうとした人はまずいない。その人があらゆる可能性を排除した後で選択した結論であった。その激しい生き方の至極当然の選択であったように私には思われる。

 西部さんというと、決まって「保守の論客」として紹介される。しかし、西部さんの唱えた保守とは何か、いったいどれぐらいの人が分かっているのであろうか。親米保守と対立する反米保守だの、左翼からの転向であるなどという党派的なおしゃべりは西部さんの保守とはほとんど何の関係もない。

 私が初めて西部さんに出会ったのは、40年以上前、まだ大学院生だったころである。その時、経済学者として東大に赴任してこられた西部さんとは、毎週夜を徹して議論するという極めて濃密な時間を持っていた。その時間の大半を使って西部さんが、われわれに向かって話されたのは、いわば生きる上での基本的な価値観、つまり生の信条であり、精神の覚悟であった。時と場合をわきまえた会話、しゃべり方、そしてそこに現れてくるその人の生きざま、それこそがすべてである。

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