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【日曜に書く】相次ぐスポーツ選手の暴力 潔い敗者であってほしい 論説委員・佐野慎輔

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【日曜に書く】
相次ぐスポーツ選手の暴力 潔い敗者であってほしい 論説委員・佐野慎輔

 ジョージ・スミス容疑者(ゲッティ=共同)  ジョージ・スミス容疑者(ゲッティ=共同)

まかり通る都市伝説

 フェアプレーというと、しばしば引用される逸話がある。

 1984年ロサンゼルス・オリンピック柔道無差別級決勝の山下泰裕選手とエジプトのモハメド・ラシュワン選手の戦いである。山下選手は2回戦で右足を痛め、足を引きずる状態だった。ラシュワン選手はその痛めている右足を攻めることなく戦い、それによって国際フェアプレー賞を受けた。

 これは嘘である。嘘というと言葉がきついか。都市伝説と言い換えておこう。

 ラシュワン選手は開始早々、右足を攻めた。空振りして、仕方なく左足を攻めたところを返されて、横四方に固められたのが真実である。山下選手の強さが際立った試合であった。

 残念ながら、そうした真実よりも“美談”が広く流布し、伝説となって今に続く。先日もあるテレビ番組で、スポーツ通で知られる北野武さんがラシュワン選手を取り上げ、痛めた足を攻めないフェアを語っていた。

 「たけしさんでさえ、そう思い込んでいるのか」。テレビの前で思わず愕然(がくぜん)とした。

 いや、もっとあきれたのは東京都教育委員会である。2020年東京大会に向けて小学校高学年から高校生までを対象に副読本を製作した。そこにフェアプレーの例としてこの話が掲載された。学校を通して都市伝説が広まっていく。

 なぜ映像が残っており、山下さんもインタビューで答えている現実に注意がいかなかったのだろう。検証不足のそしりは免れ得ない。

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