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【正論】カズオ・イシグロ氏が問う歴史の不条理 リアルな歴史を知らない反戦や平和主義は戦前の日本人と全く同じになるであろう 新潟県立大学教授・袴田茂樹

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【正論】
カズオ・イシグロ氏が問う歴史の不条理 リアルな歴史を知らない反戦や平和主義は戦前の日本人と全く同じになるであろう 新潟県立大学教授・袴田茂樹

ノーベル賞授賞式で、スウェーデンのカール16世グスタフ国王(右)から文学賞のメダルと賞状を受け取るカズオ・イシグロ氏=12月10日、ストックホルム(代表撮影・共同) ノーベル賞授賞式で、スウェーデンのカール16世グスタフ国王(右)から文学賞のメダルと賞状を受け取るカズオ・イシグロ氏=12月10日、ストックホルム(代表撮影・共同)

 今年は明治維新150周年。ノーベル文学賞を受けたカズオ・イシグロ氏の作品を引き合いに、われわれの歴史認識への疑問を述べたい。取り上げる作品は(1)『日の名残り』(2)『浮世の画家』(3)『遠い山なみの光』だが、ちなみにその内容は芸術性とは関係がない。

≪都合よく忘れられる「熱狂」≫

 作品(1)では、主人公である英国の執事が仕えた政界の大物は、第一次大戦後のドイツへの過酷な制裁に同情する親独派で、駐英大使も務めたリッベントロップ独外相などと親交を結ぶ。しかし戦後は、ナチス協力者として国民から批判され隠遁(いんとん)する。執事は、彼への批判に強い違和感を覚える。

 その理由は、1930年代を通じてリッベントロップは英国中の上流層から尊敬されていたのに、戦後彼の主人を批判する者たちは、当時の空気を都合よく忘れているにすぎない、と見るからだ。これは、後述のわが国と同じだ。

 38年のミュンヘン協定は、ナチス宥和(ゆうわ)策として戦後批判された。しかしその立役者チェンバレン首相がヒトラーとの会談後ロンドン空港に帰ったとき、英国民は平和構築者として首相を熱狂的に歓迎し空港を埋め尽くしたことはよく知られている。当時、英王室でも親ドイツの空気が支配的だった。

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