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【産経抄】860歳のみかんは完売したけれど 12月29日

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【産経抄】
860歳のみかんは完売したけれど 12月29日

 みかんは、日本人にとってもっとも親しまれてきた果物だろう。正月のお供え餅の飾りにも欠かせない。「古事記」や「日本書紀」にも記述があるほど、つきあいが長い。大分県津久見市内では、奈良時代の740年に栽培が始まったと伝えられる。

 ▼平安末期の1157年に、現在の地に移植された。現存する柑橘(かんきつ)類として日本最古の老木は昭和12年、天然記念物に指定された。驚くべきことに、実をつけ続けている。今季収穫された「860歳」のみかんは、東京・銀座の高級果物店で「八百年みかん」として販売された。縁起物として人気があり、すでに完売したそうだ。

 ▼もっともみかん全体としては、不作のシーズンだった。日本農業新聞によると、供給不足により卸売市場の相場は、21年ぶりの高値となっている。台風など、秋の天候不順が直撃した。専門家はそれに加えて、生産者の高齢化と老木の更新が進んでいない問題を指摘している。

 ▼もっと深刻なのは、日本人のみかん離れである。かつて果物の消費量ランキングで断然の1位だったみかんは、平成16年にその座をバナナに明け渡した。現在は最盛期だった30年ほど前に比べて、4分の1に減っている。

 ▼栄養については、最新の研究でも折り紙付きである。皮もむきやすい。日本人の味覚が急に変わったとも考えにくい。実は冬にこたつを使わない家が増えた、生活様式の変化の影響が大きい、との説がある。確かにこたつに入ると、なぜかみかんに自然と手が伸びる。

 ▼わが家にこたつがあったころは、みかんを段ボール箱ごと買っていたものだ。大量に出る皮は陰干しして袋につめ、浴槽に浮かべて蜜柑(みかん)湯を楽しんだ。「千客去りて蜜柑の皮の狼藉(ろうぜき)たり 尾崎紅葉」

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