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【産経抄】卒論指導するから、結婚相手探せ 12月27日

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【産経抄】
卒論指導するから、結婚相手探せ 12月27日

 芥川龍之介に、『六の宮の姫君』という短編作品がある。大学4年の「私」は、卒業論文のテーマに芥川を選んだ。出版社でアルバイトすることになり、芥川と直接対面したという文壇の長老と出会う。「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」。

 ▼芥川は『六の宮の姫君』について不思議な言葉を残していた。「私」は、探偵よろしく謎に迫っていく。直木賞作家、北村薫さんの『六の宮の姫君』(創元推理文庫)は、殺人事件の起こらないミステリーである。解説によれば、早大文学部出身の北村さんの卒論が、そのまま使われている。

 ▼就職が決まった学生は、そろそろ卒論の仕上げにかかる頃だろう。昨日の新聞に卒論をめぐる信じられないような記事が載っていた。弘前大学の男性教員が卒論を指導する条件として、自分の結婚相手を探すよう学生に求めていたという。特定の女子学生を自宅に呼んで指導もしていた。

 ▼そうかと思えば、別の大学の教員のネット上でのつぶやきが話題を呼んでいる。卒論を出さないどころか、「強要される」とハラスメントセンターに駆け込む学生がいた。ひどい内容の卒論を不可にすると、親が怒鳴り込んでくるケースもあるそうだ。

 ▼北村さんには、「卒業論文」と題したエッセーもある。初めて100枚以上の原稿用紙を埋め、論文の口述試験に臨む場面が描かれている。「これは、この通りなんだろうね」。先生は、芥川についての北村さんの推論を指して、うなずいてくれた。何十年たった後でも、先生の言葉から表情まで鮮やかに覚えている。

 ▼今もこのような師弟関係が成り立つと、信じたい。とんでもない教員ととんでもない学生の大学ばかりではないはずである。

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